ライブウォーカー バンドマンに捧げる不定期コラム

新装開店!CRバンドマン物語 〜ミュージシャンとギャンブル〜

『実話録(1)堕ちていくワタクシ』

 

前回(第一回)、前々回(第二回)と、やや堅苦しい内容をお話してきましたが、今回からは、「ミュージシャンとギャンブルの出会いや凋落ぶり」についてワタクシの実体験を元にお話しましょう。反面教師として読んで頂ければこれ幸い。

 

そう、それは20代も後半…、お隣の国で契約書を交わしバンドデビューするも、数回のライブと盛大なおもてなしを受けたのち、即座にマネージャー様が契約金数百万円を持ってドロン。帰国まもなく文無しワタクシ。

 

日本に戻ると、憧れのスーパーベーシストからバンドへのお誘いがかかります。気分屋かつ恩知らずだったワタクシは即座にバンドを脱退し、憧れのベーシストと新たなバンドを結成。

 

だが、おかしなことに、来る日も来る日も作曲&レコーディングの日々(数年)。一向にリリースの予定はないのです。これは一体どうしたことだろう? そう、どうやら新しいバンドの事務所の社長は、気難しい完璧主義者だったのです。

 

社長の狙いは、世間をアッといわせる最高傑作以外はリリースしない、という、数多くのバンドに共通する“一生前に進めないバンド理論”の最たるものだったのですね。

 

この頃から、バンドは人間としての正常な判断力を失います。

 

ベース

『仕事しながらバンドするとか “ノリ”が足りなくね?

 

メンバー

『その通りだ、仕事辞めよう!

 

数日にして無職という“最強のノリ”を手に入れます。しかし、それでも続く駄目出しの日々…。

 

社長

楽器が悪いんじゃね? もっと良い楽器買えよ。欲しいものは手に入れるのがロックだろ!?』

 

メンバー

『仰る通り!(←洗脳状態) でも僕たち無職なんでお金ありません!』

 

社長

むじんくんっていう素敵なお友達を紹介するよ』

 

メンバー

わあ、お金を沢山くれるお友達ですね!?

 

 

と、最悪のシナリオを掲げ、事務所の社員を装い、数社の街金でキャッシング(もちろん初回から限度額MAX)。

 

無職のワタクシたちは、すぐさまと窮地に追いやられ、月々の返済も危うい状況に陥ります。さすがに見かねた社長、慈愛に満ちた目でメンバーにこう語りかけてきました。

 

社長

『お金ないの? じゃあ、行く…? パ・チ・ン・コ(*´∀`)ニコッ

 

 

悪魔の囁き来たあーー!

 

本来ならば拒否すべきなのだが、とりあえず少しでも生活の足しにでもなれば…、という軟弱な心持ちによりパチンコ屋へと誘導されるワタクシ達。

 

社長から5,000円ずつ渡され、各々パチンコ台へ。たかだが5,000円、当たったらまぐれみたいなものですし、むしろ当たらない方がバンドのためにも…、って、まさかのワタクシ、速攻大当たり10連荘スカ勝ちー!

 

人生そのものが曇り空になっていた矢先、何の苦労もせずにあっさりとお金が入る方法を見つけてしまったのだから、これを快感と呼ばずなんと呼ぶ!?

 

 

この快感に間違った覚醒をしてしまったワタクシ、しばらく続くビギナーズラックにあやかり、来る日も来る日もパチンコ屋へ出勤(?)。だが徐々に負けが込んでくると、街金をハシゴし、さらなる金をパチンコにつぎ込みます。

 

そう、その目的は、もはや借金を返すためではなく、労力をともなわずにスリルと興奮、あわよくば利益も得られる、という快楽目的にすりかわっていたのです。

 

理想の高すぎる創作活動により、モノつくりの喜びを失いかけていたワタクシは、いつしかギャンブルという快楽に溺れて行ったのです。

 

荒んだ生活態度によってワタクシはバンドを干されます。だ・が…、実は、この後もワタクシのギャンブル漬けは加速してゆくのです! その悲惨な凋落ぶりを伝えることは、未来ある若きミュージシャン達への責任!

 

それでは次回の『人生の瀬戸際リーチ 〜魚群の章〜』でお話しましょう。

 

 

※本コラムはライブウォーカーのオリジナルコンテンツです。当サイトは海物語シリーズおよび株式会社三洋物産とは関係ありません。

 

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企画&ライター 浅井陽 - イラスト担当:こむじむ