実録!ヘルニア手術入院
Round 5「食欲」〜芋ケンピを食べる〜
自宅療養三日目。昨晩の大雨の影響か、結構な頭痛を抱えながら目を覚ます。だが首や背中の痛みは若干やわらいでいる様子。
今日こそは何があろうとも立ち上がってなるものか。まずは四つん這いでカーテンを開けるのだ。あまりにも変わらぬ容態に嫌気がさしはじめる。
気持ちだけでもアッパーになろうと思い、ちゃぶ台のコーヒーをゴブゴブと飲む。すると、カフェイン効果であからさまな高揚感。
コーヒーの興奮作用っていうのはたいそうなモノらしい。
有名な話では、とある大学でのテスト前に、コーヒーを飲んだクラスと飲まなかったクラス の結果の比較実験というのがあります。コーヒーを飲ませたクラスは解答スピードが上がり、ほとんどの生徒が規定時間の10分以上も早く仕上げたそうな。そして正解率に至っては、なんとコーヒーを飲まなかったクラスと比べて驚愕の10%減!
コーヒー駄目じゃん(笑)
まあ、それでもいいんです。今のワタクシにはコーヒーくらいしか気持ちが高まることがないんだもの。あとはオマケにメタリカのDVDを観てバーチャルヘドバン!(実際に頭を振ったらリアルに昇天できる)大好きなものでノリノリになって治癒力高める作戦。ヘビメタ療法とでも名付けよう。
しかし「何をやるにも頭を起こせない」この状態。やっぱりすぐに不安になります…。
さあ、後は一日やることなどございません。
この日も用法用量を守らない薬で寝落ち。
自宅療養4日目。本日も立ち上がらないように起床。四つん這いのまま移動をこなします。しかし一つ良い兆候が出てきた。この日ついに「食欲」を自覚。今までは栄養補給として食べていたが自主的に腹が減ってきた。
『肉と野菜 を食べたい。牛肉の赤ワイン煮とイベリコ豚の生ハムを食べたい。ニンニクと油を飲みたい〜』と、おおよそ病人とは思えぬ生意気な願望が沸々と湧いてくる。
とても喜ばしいことなのだが、そんな時に限って家で一人きり。目の前にあるのは「芋ケンピ」と「納豆」。納豆なんて蓋開けてかき混ぜる、という大作業ですから匍匐前進がせいぜいの病人には高嶺の花。
必然的に「芋ケンピ」しかないのです。
自殺を考える程の苦痛を味わった病人であるならば、この「芋ケンピ」ですら感謝して食べるに違いなかろうが、ワタクシの心には、1ミリの火垂るの墓も持ち合わせておりません。只々、腹立たしい気持ちで「芋ケンピ」を食します。
それにしても、もう寝たきりにもいい加減飽き飽き。
ただ現状は、頭さえ立たせなければ初日のよう痛みはない。ということは『腕立て伏せなら出来るんじゃね!?』と、ちょっと危険なリハビリ(暇つぶし)を思いつきます。
何も出来ないフラストレーションからか即座に腕立て失せを開始。
嬉しい事に頭痛も首の痛みも起きない様子。PCは出来ないが腕立ては出来るという意味不明な体調だが、これは思わぬ収穫である。
この後、多少の目眩と発熱をしてしまうが、そんなものは低髄液圧症候群発症時の苦痛に比べたら屁でもない。この日より腕立て伏せと、この日記が心の支えとなるのであった。
この数日間、目が覚める度に思う事は『今日こそ普通に立ち歩けて、街に繰り出し麻婆豆腐でも食べに行きたい』というあたりまえの日常的な願望のみ。
ほんの少し贅沢を言うならば『道行く可愛い子に声をかけ、居酒屋にいる可愛い子に声をかけ、ライブハウスにいる可愛い子に声をかけたい…(*´д`*)』。
ナンパって健康だからこそ出来るんだねえ…。
このまま寝たきりだったら騎乗位しか出来ないなあ…、あ、でも騎乗位の達人になれば、その噂はたちまち広まり、連日部屋の前に列をなす女達。しかたなく書いた「騎乗位専門マニュアル」は社会現象となり…、あ…、すんません。つい…。
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Round 6「自立」