がん告知から余命宣告 亮弦-Ryogen-
第2回『がん治療の助け舟』
前回に続き、悪性リンパ腫ステージ4、余命2週間。衝撃の宣告を受けたギタリスト亮弦。今回は、がんの治療法ならびに、がんにまつわる医療制度についてお話します。
『がん治療の助け舟とはどういうもの?』
『唯一の助け舟、それは、保険診療である三大治療(手術、抗がん剤、放射線)です。部分的な内臓のがん等であれば手術でとり除く、全身ならば抗がん剤、放射線治療といった具合に、がんの種類に合わせて治療します。自分はこれで生き延びています。余命2週間だったのに20カ月以上生きています』
『とくに最近、芸能人でも標準治療を選択しなかった、という話をよく目にするよね。命にかかわる治療なのに、三大治療を否定する人は後を絶たない』
『オーガニック療法などを推進する人たちは、その三大治療を盲目的に否定している人も多い。「抗がん剤は毒薬だ」などと不安をあおり、ひどい場合は製薬会社の陰謀論にまで発展しています』
『その手の陰謀論はほんとに多いよね……』
『事実、抗がん剤は毒薬であり劇薬なので「毒」という捉え方はその通りかも知れません。世界で最初に開発された抗がん剤は、戦時中化学兵器に使われていたものがルーツだと言われている』
『すごいものが亮弦の身体に入ってるんだな……』
『化学兵器の影響を受けた兵士達の体を調べると白血球が著しく低下していたので、これは白血病の治療に使える、ということから研究が始まったんです。この薬は、今なお医療の第一線で使われ続けています。そしてこの薬で助かった人間は数多くいますし、自分もその恩恵を受け、死にかけた所を何とか回避しています』
『苦しい治療だと思う。ただ、その甲斐あって、亮弦は今ここに生きて、音楽で人を魅了している現実がある』
『三大治療を悪とみなす人たちは、患者がなぜその治療を選んだのかを全く理解していません。普通に生活していれば、日々忙しく毎日を過ごし、気づいた時には末期がん、そんなことがよくあるんです』
『まさに今の亮弦の状況だよな』
『そんな毎日の中、まだまだ「生きたい」と願う人たちが化学治療を受けているんです。好き好んで化学療法を受ける人間などいないし、人への尊厳なくして医療の発展は有り得えません』
『実際、どうしたら三大治療への誤解が解けると思う?』
『何ゆえに助かる人と助からない人がいるのか良く考えてみるべきです。なぜ、地位も名誉も資金もあるスティーブ・ジョブズががんで倒れたのかを考えて欲しい』
『スティーブ・ジョブズはハーブやマクロビ、絶対菜食、霊媒者といった代替療法を選んでしまい、治る可能性の一番高かった手術を受けなかったことを後悔していた』
『やはり肝となるのは早期発見と、それに伴った適切な治療です。ただ、がん検診はかなり高額なんです。PET検査は、がんと診断された人以外は保険がきかずに14万円ほどかかってしまいます。批判すべきはこの辺りなんです。誰もが、あと一歩踏み込んだがん検診を現実的な金額で受けられる制度があれば、がんを取り巻く環境は劇的に良くなるはず』
『医療進歩による低コスト健診。それはうちの祖父、池上直一の切なる思いでもあった。それでは最後に亮弦からメッセージを頂きたい』
※本コラムは2017年8月の取材をもとに執筆しています。
<<次へ進む>>
第3回 限られた選択肢の中で……