イベント会場の魅力探索ガイド Vol.17
滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール
湖畔のオペラ、創造し発信する劇場をめざして
水鳥が泳ぐ琵琶湖のほとりに建つ「滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール」は、西日本で初の4面舞台をもつオペラ劇場として建設され、「創造し発信する劇場」をコンセプトに1998年9月5日オープン。オペラとクラシックコンサートを主眼とした大ホール(1,848席)、演劇に特化した中ホール(804席)、室内楽向けの小ホール(323席)、3つのホールを有する県立の芸術劇場・コンサートホールである。
オープン以来、毎年オペラの自主制作・上演をつづけ、芸術監督のもと日本最高水準の力を結集したプロデュースオペラ、びわ湖ホール声楽アンサンブルの活動を軸に、日本で数少ない「オペラをつくる劇場」として、その名を響かせている。
オペラハウスとコンサートホール、2つの顔をもつメインシアター
大ホールは4層1,848席、オーケストラピット設営時1,712席。4面舞台をもつプロセニアム型劇場と、走行式音響反射板(シェル)を使用したシューボックス型コンサートホール、2つの劇場形式をもつ。
「生音」を重視した建築音響で、豊かな残響を得るため、ホールの天井を高く、横幅を狭く、生の声が客席に届くよう主舞台から4階席うしろまで奥行き38mに設計。
オペラのときは、プロセサイドや客席壁の一部を開いて、キャストに照明を当てたり、オケピット上部の天井を昇降させてオーケストラの音量を可変したり、コンサートでは照明フロントやシーリングの壁を閉じて音の反射率を高めるなど、演目・編成によって調整する。
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演奏者(Artist)と観客(Audience)、双方に心地よい音響(Acoustic)
ホール内装には音響特性に優れたサクラ材(壁)とナラ材(床)を使用。多くの劇場では、足音を軽減するためにフロアや通路には絨毯を敷き詰めている一方、びわ湖ホールではあえて絨毯は敷かずに、木の響きを引き出し、音の反射率を高めている。
イス格納時の吸音がほどこされた客席シートも注目ポイント。布の座面を背もたれに密着させず、斜めの状態で留めることで、リハーサル時(空席時)と本番(満席時)の残響差を軽減。ステージに立つ演奏者は、本番に近い音響でリハーサルできる。コンサートホール仕様の残響時間2.0秒、劇場仕様1.5秒。
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国内屈指の4面舞台、湖水面の下に広がる大奈落
客席から見えている主舞台は18m×18m。奥と上手、下手に同じ広さの舞台があることから「4面舞台」と呼ばれる。主舞台は5つの迫り(各18m×3.6m)からなり、最大1m80cmまで昇降可能。階段状にして第九の合唱台にしたり、基礎舞台の一部として利用したりすることで大道具の節約にもつながる。
奥舞台には回り盆を内設したスライディングステージ、袖舞台には主舞台迫りと同じ大きさのワゴンが5台ずつ収納され、第2・第3幕のセットを組み立てたまま主舞台に移動できる。大がかりな舞台転換もスピーディーに行える4面舞台と機構を誇る「びわ湖ホール」は、海外オペラの引っ越し公演もオリジナル演出で再現できる日本で数少ない劇場のひとつ。
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驚きと感動を演出する、舞台裏のクルーたち
オペラの上演では、すべてが音楽(指揮者が司る生演奏)にあわせて進行する。幕の開閉、装置の移動、照明の変化も、音符がきっかけを決めるため、オーケストラピットの指揮者をモニターする「指揮者モニター」が重要な役割をもつ。調光室、音響室、舞台機構操作室、舞台裏で仕事をするスタッフも、タクトを感じながら、それぞれの「楽器」を奏でるのだ。
ほかにも、オーケストラピットの音をマイクで収音し、舞台上のキャストが聞くためのステージモニター、楽屋の衣装スタッフや舞台スタッフ専用の運営系モニターが活躍する。
主舞台の上には58本の吊りバトンとライトブリッジ4基。円滑な運用のための安全管理、日々の作業ひとつひとつの積み重ねによって作品が作られている。
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比叡・比良の山々を仰ぎ、琵琶湖を一望するAtmosphere(環境)
やわらかく清涼な光に満ちたホワイエは、列柱や壁にイタリア・トスカーナ産の白大理石を使用。ビアンコカラーラの流れ模様に、劇場と日常をむすぶ渡し舟、湖上の風景が浮かびあがる。
メインロビーでは毎月、滋賀県ゆかりの演奏家によるロビーコンサートが開かれる。2007年8月にメインロビーに舞い降りて以来、音楽家たちにインスピレーションを与えてきた1927年製のエラールピアノ(モデル260・エクストラベース)が、2019年3月をもってびわ湖ホールを去ることになった。「びわ湖からはばたく」ダークマホガニーの羽をひろげたエラールピアノのラストロビーコンサート、こころの湖面に美しい音色を響かせる。
オペラ・クラシック音楽・バレエ・演劇などの書籍や雑誌、DVDを自由に閲覧できる舞台芸術サロン(右下)
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大津湖岸なぎさ公園と琵琶湖に浮かぶ帆船をイメージした建物
1981年「びわこ国体」の県民オペラを出発点に、オペラをつくる公共ホールを掲げ、淡海に帆をあげた「びわ湖ホール」は、設計の段階より照明、音響、舞台技術など各セクションで豊富な経験をもつプロフェッショナルが劇場づくりに関わってきた。
「観客をつくる」取り組みに力を入れ、「ここでしか観られない作品」を制作することで培われたノウハウや経験の蓄積は、舞台芸術を担う舞台スタッフの育成に活かされ、県下や関西の演奏家が羽ばたく舞台となり、湖国の文化を生み出す拠点となっている。
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所在地:滋賀県大津市打出浜15-1 石場駅からのアクセス・周辺駐車場・公式サイト
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