イベント会場の魅力探索ガイド Vol.28

彩の国さいたま芸術劇場

星『エトワール』現る、さいたまアーツ最前線

世界最前線の作品や才能をいち早く紹介し「彩の国」で生まれた舞台芸術を世界へ羽ばたかせる埼玉県立の舞台芸術専門劇場。演劇、舞踊、音楽、映像などに対応した4つの専門ホールと12のけいこ場・練習室を有する。

初代館長・芸術監督に作曲家の諸井誠、2006年より演出家の蜷川幸雄が芸術監督に就任。蜷川レガシーを継承発展させ、地域とともに歩み育む、公共劇場の新たな創業期を迎える。

JR与野本町駅からアートストリート徒歩7分、バラ薫るまちに1994年10月オープン。

 

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国内有数の3面半舞台と「一体感」を合わせもつ大ホール

演劇やダンス、ミュージカル等を主目的とする2層バルコニー形式776席(オケピ使用時680席)のメインシアター。

肉声での演技に最適な客席規模、演者の表情や身振りが生き生きと伝わり、観客の反応をじかに感じられる密度の高い空間が魅力。18世紀英国の劇場形式と江戸の芝居小屋を現代的にイメージしたホール意匠も印象的だ。

舞台の広さは国内トップレベル。奥行き約36m、プロセニアム形式の主舞台は後方と上手に同じ広さ、下手に半分の広さをとった三面半舞台。スライディングステージと主舞台迫り4基を備えたパフォーミングアーツの殿堂。

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未知なる可能性を秘めた可変式の小ホール

演劇、ダンス、音楽、落語など多彩な演目と実験的な舞台表現を可能とするアダプタブル・シアター。

古代ギリシャ劇場を彷彿とさせる、すり鉢状の客席とU字ギャラリー、オープンステージが想像の羽根を広げ、創作意欲をかきたてる。

舞台と客席の関係性は変幻自在。迫り床と奈落に収納された客席ワゴンを昇降して266席・298席・346席に席数可変。舞台板の一部を手動で取り外し、登場人物が出入りする「切り穴」を組むこともできる。バックヤードには簡易的な舞台装置や小道具を製作する工房を併設。

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室内楽を中心としたシューボックス型の音楽ホール

室内楽やピアノリサイタル、古楽演奏に適した美しい響きをもつ2層604席のコンサートホール。

暖かい色調に包まれた気品あるクラシカルな内装に、テラスの木格子が和のエッセンスをプラス。天井の高窓から採光も可能。

オープンステージ間口16m、奥行9.2m、天井高13.5m。
残響時間(満席時)約2.0秒。

光あふれるホワイエ。日差しを和らげるスクリーンには、J.S.バッハのモテットやベートーヴェンの月光、ドビュッシーの楽曲一節が織り込まれ、窓辺に「光の音景」を映しだす。

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空にひらかれたオクルス、ガラスの光庭

シンボルタワーに導かれて大階段を上ると、列柱とガラスブロックに囲まれた円形広場「ロトンダ」が現れる。大ホール・小ホール・音楽ホールの入口を三方に面し、中央の「ガラスの光庭」から1F情報プラザへ自然光が降り注ぐ。

彫塑的な打ち放しの連続アーチ、水を湛えたような床面をもつ幻想的な空間では、ポジティフオルガンの音色を楽しむ「光の庭プロムナード・コンサート」、『彩の国シェイクスピア・シリーズ』開演前のプレリュード「さいたまアーツシアター・ライヴ!!」を開催。

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「創造の現場」に直結、発信と交流の情報プラザ

【A】 飲食や歓談、休憩に利用できる利用者交流コーナー
【B】 ガレリア入口、チケット販売と施設利用受付を行う総合インフォメーション
【C】NINAGAWA STUDIO(大稽古場):主舞台と同規模の広さで、本番に近い環境で制作可能。真向かいには、稽古場を見守る故蜷川幸雄監督メモリアルプレート。
【D】舞台芸術資料室:図書や雑誌、映像資料の閲覧・視聴が可能。
【E】映像ホール:芸術的映像作品の上映を中心とした150席のミニシアター。7.1chデジタルサラウンド対応。椅子はメモ台付きでシェイクスピア講座やセミナー等も開催。

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「彩の国」へつづく道、『この世は舞台、人はみな役者』

劇場内で最も「彩の国さいたま芸術劇場」を象徴する施設が、幅5m長さ100mの吹き抜け通路「ガレリア」だ。 稽古場やホール楽屋口に面し、一般利用客と俳優、制作スタッフ、劇場関係者が行き来する街のストリートのような空間。「創造する劇場」の日常がここにある。

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所在地:さいたま市中央区上峰3-15-1 与野本町駅からのアクセス周辺駐車場公式サイト

※このページはライブウォーカーによる企画・取材・編集コンテンツです。当サイトは彩の国さいたま芸術劇場および埼玉県、公演主催者、スポンサー等とは関係ありません。また、敷地内の写真は許可を得て撮影しております。画像・文章の無断転載等は禁止いたします。

MUSIC-MDATA編集部(取材日 2020年2月)

魅力探索ガイド一覧(バックナンバー)

大ホール舞台の上から客席を一望
ステージに上がると想像以上に客席が近い。肉声での演技が伝わる最適な客席規模。前3列は床を昇降してオーケストラピットや張り出し舞台になる。
高度な舞台機構、バトンと照明ブリッジ
客席数に対する舞台の広さは国内最高レベル。4基の主舞台迫りと後舞台のスライディングステージ、36本のバトン、照明ブリッジ5基を完備。
縁の下の力持ち、大ホール奈落
奈落の底で活躍する、主舞台迫りの昇降駆動システム。平米2トンの耐荷重で、左側の搬入口から舞台道具を出し入れする。半地下に中奈落とオケピ入口。
大ホール楽屋エリアを見学
楽屋1〜3は個室、4はピアノ付き、5〜8は大部屋。ラウンジ横の扉は仮設花道の鳥屋口になる。同一フロアに楽屋や衣装部屋があり、舞台袖と直結。
映像ホールと希少な35ミリ映写機
150席のミニシアター、普段は入れない映写室も見学。主流のデジタルシネマと映写機を使ったフィルム上映、映写技師にまつわる貴重なお話を聞く。
小ホールのU字ギャラリーを一周
照明器具が吊るされた高さ6mのギャラリーから、すり鉢状の客席とオープンステージを見下ろす。階段やバックステージ、空間すべてを使って演出可能。
小ホール奈落の仕掛け
奈落に林立する金属柱の昇降装置。A迫、B迫、C迫があり、奥に収納された客席ワゴンをスライドして舞台面にあげると3パターンに席数が可変。
光射すロトンダから大空を仰ぐ
劇場の中央部にある「ガラスの光庭」と情報プラザ、吹き抜け通路の「ガレリア」を通って、3つのホール入口に面した円形広場「ロトンダ」へ。
コバトンと記念撮影
大ホールへ戻ると、埼玉県の人気マスコット「コバトン」がサプライズのお出迎え。最後はコバトンといっしょにパチリ。
サウンドペディア
与野本町駅(さいたま市中央区)
与野本町駅(JR埼京線)
旧鎌倉街道・羽根倉道(現在の本町通り)の要路、江戸時代の宿場町として栄えた与野本町に1985年開業したJR埼京線の駅。浦和と大宮に挟まれた旧与野市は2001年の大合併で「さいたま市中央区」に改称。彩の国さいたま芸術劇場の最寄り駅で、駅周辺は主に住宅地が広がる。JRスタンプは与野七福神と与野公園のバラ。
アートストリートエリア(たつみ通り)
アートストリートエリア(たつみ通り)
与野本町駅から劇場をむすぶ経路に「彩の国シェイクスピア・シリーズ」出演者手形レリーフを設置。宵には歩道のソーラーライトにシェイクスピアの名台詞が浮かびあがる。