ライブやろうぜ!ステージファイル Vol.87
国立 地球屋
- 国立地球屋 について
- 国立(くにたち)大学通りに2003年6月オープン。立川時代より、音楽やアート、多様な分野で活躍する人々に愛され、独自のカルチャーが息づくライブハウス。ミュージシャン仲間による手づくりの内装。阿蘇産直のホルモン焼き、焼き魚など飲食メニューを充実させる一方、出演ノルマは一切とらない方針だ。地球屋ブッキングマザーのエルさんは「楽しいものはなんでもやってみる」の精神で、あらゆる方角に美しきもの、おもしろきことを見出し、つなげていく天賦の才の持ち主。LIVEや個展、ナイトバザーのほか、被災地の支援につながるイベント企画にも力を注いでいる。
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- 国立地球屋 公式サイト
東京都国立市東1-16-13 B1
TEL:03-5456-5038
ブッキング・イベント企画募集中(詳細)
ライブハウスの中の人に話を聞いてみた〜 国立地球屋 編
このコーナーはライブハウスでバンドをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。
ライブや音楽だけじゃなく、楽しいものは何でもやっている
本日は国立地球屋、ブッキングマザーのエルさんにお話をお伺いします。著名なミュージシャン、アーティストが集まることでも知られていますね。オープンはいつになりますか?
国立でのオープンは2003年の6月です。その前は、1998年頃から立川でやっていました。
立川から、ここ国立に移転した経緯は?
前のお店は、立川駅から離れた、昭和記念公園近くの閑静な場所にあったのですが、店の外にお客さんが並ぶだけでも、ご近所さんにご迷惑がかかることがあったようで…。
店舗内外での音の問題はどのライブハウスも悩みのタネですね。
まあ、しょうがないですね。こちらに来てからは随分と良くなりましたし、演者さんも変わりなく来てくださったので。
お店の名前の「地球屋」というのもインパクトありますね。
最初は「宇宙屋」にしようと思っていました。店舗の内装を施工してもらった大工さんの友人たちが、「え、宇宙屋って?」という、ちょっと引いた反応で(笑)。じゃあ、ランクを落として「地球屋」にします、という流れで。
みなさんの「地球屋」への反応は?
「地球屋」にしたら、なぜだかわからないけど、友人もみんな納得したようでした(笑)。宇宙だとちょっと壮大すぎて、お店の規模からすると、ちょっと小さいからかな?
地球でも十分スケール感ありますけどね(笑)。
うん。でも、きっと丁度いいと思う(笑)。
エスニックな雰囲気漂う店内ですが、音楽的にジャンルの方向性はあるのですか?
いいえ、私の中では、ジャンルでの制限はありません。ロック、ジャズ、ヒップホップ、レゲエ、パンクから民謡、民族音楽までやっています。パンクの日は、テーブルをどかして、オールスタンディングにしていますよ。出演者も、有名なところでは、ラッパーの鎮座DOPENESSくん、ドラマーの中村達也さん、RIZEのkenkenをはじめ、いろいろな方が来てくれます。
幅広いフィールドのアーティストとつながりがあるのですね。
有名・無名に関係なく、良いものはなんでもやりたいと思ってやっているうちに、自然につながっていった、という感じ。ライブや音楽だけじゃなく、楽しいものは何でもやっています。
個性的でおもしろい感性、すばらしい才能を探すのが大好き
ぜひ、くわしく聞かせてください。
毎月第2火曜日に「ナイトバザー」っていうのを開いていて、これがすごく楽しい。入場無料で、古着やハンドメイドアクセサリー、ヘナタトゥー、壁を使った写真やコラージュ作品の個展もやりますし、オーガニックのパン屋さんも出店しています。
ライブハウスでパン屋さん出店?
自家製の天然酵母を使ったオーガニックのパン屋さんで、無農薬みかんの皮を乾燥させたものを入れたり、宮崎の地鶏を使ったりして作っていて、毎回ほとんど売り切れ。私も毎回買っていて、月に一度なので、まとめ買いして冷凍保存しているくらい好き(笑)。
まさにお祭りのようなイベントですね。
あと盆栽も出店していますよ。4、5年物の本格的な手の平サイズの盆栽。1,500円くらいで売っているけど、元取れてないんじゃないかな(笑)。これもホントに楽しみ。9月には、針金に毛糸を巻き付けた造形作品をつくる「念形師家元 須永健太郎」というアーティストがイベントをやります。
いろんな方角に感覚を開いていて、何よりエルさん自身が楽しまれているのが伝わってきます。
個性的でおもしろい感性をもった人たち、すばらしい才能を探すのが大好きなんです。
これから地球屋として、力を入れていきたいこと、ビジョンのようなものがあれば教えてください。
通常ブッキングイベントとは別に、東日本大震災のころからやっている、被災地の子どもたちを応援する取り組みは続けていきたい。
どういった取り組みでしょうか?
夏に、被災地の子どもたちに青梅でラフティング体験をしてもらうイベントを企画しました。その活動費の一部はDJイベントの入場料という形で、お客さんに寄付金として協力してもらいました。
イベントの入場料が被災された子どもたちへの支援になるのですね。
そうですね。「子どもたちのバス代になりますよ」ということで、みなさん快く入場料を払ってくれました。自主制作映画を作っている方たちに協力してもらって、福島の子たちのフラダンス映像を作成したこともありますし、この空間を使ってできる、支援活動を進めていきたい。
人々の記憶が徐々に薄れていくなか、震災復興への関心を喚起しつづけたい
企画されたラフティング体験イベントはどうでしたか?
子どもたちが河原で「裸足で遊ぶの、ひさしぶり!」って言ったのを聞いて、うちのスタッフが泣きそうになったって。マスクしないで裸足で遊べる、川に落ちて大泣きするという、そんな普通のことが、被災地の子どもたちにとって日常ではないんです。
私たち一人ひとりが、しっかり目を向けなくてはいけない現実ですね。
震災から7年経ちましたが、いまだにそうですからね。手伝ってくれるスタッフや、こういう活動をしている人たちの声を、音楽といっしょに広められたら、もっと大きな声にできるじゃない?
音楽を通じて、子どもたちの心に寄り添う支援ができたら、すばらしいなと思います。
この思いは、一昨年(2016年)の熊本地震でもっと強くなりました。というのも、私は熊本阿蘇出身で、先の大地震で家が全壊したものだから…。
ご家族は大丈夫だったのですか?
家は全壊してしまいましたが、幸い二人暮らしの母と甥っ子はケガもありませんでした。
被災された方とそのご家族の方を思うと胸が痛みますが、エルさんのご家族がご無事でよかった。
はい、彼女たちが無事だったから、こうしてお店も続けていられると思っています。家族に何かあったら地球屋もクローズしていたかもしれません。
熊本の状況というのもまだ?
今でも大変な状況ですよ。阿蘇大橋が崩落して、行き来にも不自由しています。多くの方に「今、阿蘇に何が必要?援助したい」と言っていただいていますが…。
今現在、熊本地震の援助で一番必要なものは何ですか?
現地には、もうすでに物資はたくさんあります。でも、先に言ったように、日々の生活を送るのが大変な状況なので、支援するならお金を送ってあげてほしい。個々が、いつもの日常を取り戻すための費用が必要です。
現地の状況に応じた、適切な支援が求められているのですね。
人々の記憶が徐々に薄れていくなか、震災復興への関心を喚起しつづけることも大切だと思っています。
この機会にもう一度、東北、熊本の震災被害支援について考えたいですね。それでは最後になりますが、地球屋からメッセージをお願いします。
伝えたいことは、「次につなげる」ということです。文化をしっかり伝承していきたい。私としては、演奏だけじゃなくて、楽しみ方やマナーも大事にしてもらいたい。たとえば、昔は、野外フェスが終わると会場がゴミの山だったのが、最近になってやっと自分たちで捨てるようになったように、そんな当たり前のことも、音楽をやる中で誰かがしっかり教えていかないと。
共に楽しみながら、上の世代から次の世代に大切なことを伝えていくということ?
うちでは、孫ほど年の離れた出演者がステージに上がるようになってきているので、世代を通じて一緒に刺激して、高め合える場になったらと思います。そして、公園やバー、もっといろいろなところで、音楽を奏でることができればステキですね。
さまざまな角度から、音楽や文化を見つめ直す機会となった取材でした。本日はありがとうございました。
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