LiveWalkerが取材したライブハウス・インタビュー特集(全111回・2013年7月〜2020年2月)のアーカイブです。掲載情報は取材当時のものです。

ライブやろうぜ!ステージファイル Vol.88

歌舞伎町 Golden Egg

歌舞伎町Golden Egg について
2007年4月、新宿歌舞伎町にオープン。オーナー青柳氏のサックスプレイヤーとしての活動と、ライブハウススタッフとしての現場での豊富な経験を活かし、ミュージシャンと箱の理想の関係を求めて運営。チケットノルマなしの出演システムと、土日はブッキングライブ、平日はセッションを中心としたスケジュールが特徴。ロック、ジャズ、ファンク、ブルース、インストから歌ものまでバラエティに富んだラインナップで、ベテランも初心者も「楽しく」を第一に、お酒を飲みながらジャムセッションを満喫できる。キャパシティ最大50席。
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歌舞伎町Golden Egg 公式サイト
新宿区歌舞伎町1-16-10 第27東京ビルB2F
TEL:03-3203-0405
出演バンド・イベント・貸し切り募集中

ライブハウスの中の人に話を聞いてみた〜 歌舞伎町Golden Egg 編

このコーナーはライブハウスでバンドをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

歌舞伎町ゴールデンエッグオーナー 青柳充郎氏

これまでの現場で感じたマイナス要素を取っ払って運営してる

本日は新宿歌舞伎町のゴールデンエッグ、オーナーの青柳さんにお話をお伺いします。オープンはいつになりますか?

2007年4月24日にオープンしました。

オープンまでの経緯を教えていただけますか?

前職時代からつきあいがあった六本木のとある芸能スクールがありまして、そのスクールのスペースに、音響機材を持ち込んで、週1、2回ライブをやるというシステムの立ち上げと運営の手伝いをしていました。そのスクールの社長の知人に、今の場所(ゴールデンエッグ)の所有者がいて、ここでライブハウスをやりたいという話がきたのがきっかけです。

ということは、お店の立ち上げから携わっている?

いいえ、立ち上げは別の人が担当して、2006年夏頃にオープンしていました。僕の方にも店長をやってくれないかという打診はありましたが、その時は六本木の方の仕事もあって、すぐには行けなかったので。

その後、どういった流れでゴールデンエッグに?

実は、最初の店長さんは売上が出せなくなって、借金を抱えてしまって(苦笑)。それでも、どうしてもこの場所でライブハウスを続けたいということで、店名もそのままに、あくまで雇われ店長ということで僕が店長を引き受けました。最初の頃は、前の店長を探しに取り立て屋がいっぱい来ていました(笑)。

今現在は、青柳さんがお店のオーナーですよね?

はい、そうです。今は自営でやっています。

それにしても、歌舞伎町というのは抜群のロケーションですね。

交通の便はいいし、世界中から人々が集まる東洋一の繁華街ですから。歌舞伎町の一等地にあるライブハウスというのは、大きなメリットですね。

ライブハウス、ライブバーが多数存在する新宿で、ゴールデンエッグをどのようなライブハウスにしようと思いましたか。お店のモットーなどがあったらお聞きしたいです。

いろいろなライブハウスの現場をみてきたので、そこで自分が感じたマイナス要素を取っ払った運営をやる、まず、チケットノルマ制をやめようと思いました。最終的にはノルマはバンド側にもお店側にもデメリットが大きい。

出演バンドとのよい関係を求めて、セッション中心でノルマはなし

バンドとしてはノルマなしというのはありがたいですが、デメリットもありますか?

バンド側にチケットノルマとして費用を負担させると、「お金を払っているのだから好きにやらせろ!」というメンタルになりやすい。なかには、まったくお客を呼ばなくても、何も気にしない人もいますからね。

そこで開き直るのは、たしかに良くないですね。

お客さんに自分たちの演奏を聴かせてこそのライブハウスだからね。

バンドと箱の信頼関係や取り組む姿勢によっても変わってきそうです。

六本木時代の後、都内の某有名ライブハウスでスタッフをやっていたときの話ですが、そこはかなり問題があった。キャパ50人程度に対して、チケットノルマ20枚で各バンド3、4万円くらい回収し、それを多いときは一日6バンドブッキングする。どう考えても収容できないじゃないですか? 最初からペイバックする気ないわけですよ。

全バンドがノルマをクリアしたら、お客さんが入り切らない…。

基本的にチケットノルマは昔からの常識ですが、僕がいたその問題の店のような場合、箱がバンドに嘘ついていることになる。バンドとそんな関係になるのはイヤですよね。だからノルマはなしにしようと思いました。

しかし、箱側としては、結局のところ集客をしないと経営がなりたちませんよね? そのため、多くの箱でノルマを導入していると思うのですが。

もちろんです、そこをクリアーする方策の一つとして、ミュージシャン同士が交流できる「セッション箱」として打ち出しました。自分がセッション好きというのもありますが、スケジュールもライブをブッキングするよりセッションの方が埋まりやすい。平日はだいたいセッションをしています。

青柳さんのライブハウスでの現場経験から、現在の理想形にたどり着いたのですね。セッションメインとなると、お客さんは演者さんが多いと思いますが、年齢層はどのような感じですか?

ベテランの方が多いですね。もちろん20代もいますが、30代から上がメイン。男女比も7:3くらいで男性が多いです。イベントによっては女性が多いこともありますが。

箱の鳴りはどのような感じですか?

コンクリの打ちっぱなしなので最初はローがまわっちゃって大変でした。それで反射板を立てたり、吸音材を入れたりしてバランスを整えました。今は、かなり良い音だと自負しています。

客足が減っている原因の一つは「実態」が分かりにくいこと

続いて、青柳さんの音楽経歴、この業界に入った経緯について教えてください。

高校時代にキングクリムゾンに影響を受けてフルートを始め、大学でジャズ研に入って、サックスをやり始めました。その後、大学を中退して、歌舞伎町や横浜で箱バンやミュージシャン活動をしていました。

現在までずっと音楽の現場一筋でやってこられたのですか?

いいえ、一時、音楽の世界から離れていた時期があります。子どもが生まれて一般の仕事についたので。でも、その仕事がきっかけで、先述した六本木の社長に出会い、その時はウェブ制作の仕事を託されたのですが、ふとしたきっかけで僕の演奏が、その社長の目に止まって。

それで、最初に伺ったライブイベントのシステムを立ち上げる話につながるのですね。

はい、再び音楽の世界に戻って来ることになりました。流れのなかで、自然と音楽活動と仕事が再開したという感じです。

ところで、今後ライブハウス業界を発展させていく上で、考えていることがあればお聞かせ下さい。

ライブハウス全体の客足が減っているとすれば、原因の一つとして、「ライブハウスの実態」が分かりにくくなっていることがあると思います。ライブハウスやミュージシャン側から、そのあたりを解決するようなビジネスがまだまだ出てきていないように思います。

ライブハウスで何が行われているのかわからない…、ということですかね。どういったビジネスが考えられますか?

最近は動画やライブ配信があたりまえになっています。ですから、例えば、ジョン・コルトーレンの曲を聴きたい、映像を観たいというときに、テレビやネットのオンデマンド配信からだけじゃなく、ゴールデンエッグでもブルーノートなどのライブハウスでも、コルトーレンが演奏されているということを知ってもらえるような仕組みはあってもいいですよね。

確かにライブハウスで演奏されているものまで、縦断して簡単に検索できるようなサービスはまだないかもしれませんね。どうすれば実現しますか?

YouTubeのような動画配信プラットフォームを、ライブハウス用にカスタマイズして、ライブハウスの検索システム、データーベースを構築する。チャンネルやジャンル分けを明確にして、コンテンツを探しやすく、観やすくすることだよね。貴重なコンテンツが集まってくれば商品価値も高くなるので、宣伝、スポンサーもつくかもしれない。

コアな音楽ファンにとっては魅力的なサービスだと思いますが、なかなか難しいところもありそうですね。

各自ライブやイベントの動画配信は大前提で、そこに動画全体を検索するために、統一の共通フォーマット化することが最初の課題だと思います。それと、著作権の問題など、いろいろ問題は出てくるでしょうけど、そういったものをクリアした上で成立させれば、音楽やライブハウス文化を将来につなぐものとして、とても重要なものになると思いますよ。

なるほど、まだまだ打開策はありそうですね。それでは最後にゴールデンエッグからメッセージをお願いします。

ここには、すてきな音楽の出会いがあります。ぜひ遊びに来てください。

新たな魅力を発信する「エンターテイメントシティ歌舞伎町」から音楽交流の輪が広がっていくことに期待したいです。本日はありがとうございました。

インタビュー&ライター 浅井陽(取材日 2018年5月)

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