LiveWalkerが取材したライブハウス・インタビュー特集(全111回・2013年7月〜2020年2月)のアーカイブです。掲載情報は取材当時のものです。

ライブやろうぜ!ステージファイル Vol.55

新宿 MARZ

新宿MARZについて
歌舞伎町に2001年12月オープン。未来のミュージックシーンに躍り出る注目のインディーバンドが集まるハコとして存在感を放ってきたライブハウス。サウンドクオリティに定評があり、ライブ・クラブ、多様な楽しみ方ができる2層構造300キャパの空間は、さらなる上のステージを目指すアーティストにとっても申し分ない環境。これまで培われてきた「常に新しいものを輩出していく」スタンスで、風翔ける眩い感性を送りだす。
新宿MARZへのお問い合わせ
新宿MARZ公式サイト
新宿区歌舞伎町2-45-1 第1トキワビルB1F
TEL:03-3202-8248

ライブハウスの中の人に話を聞いてみた〜 新宿MARZ編

このコーナーはライブハウスでバンドをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

新宿MARZ店長 星原喜一郎 氏

本日は新宿MARZ店長の星原喜一郎さんにお話をお伺いします。まずはオープンの時期と、現在までのお店の経緯についてお聞かせください。

MARZは2001年にオープンしたので今年で15年になります。自分がMARZに入ったのは約5年前なのでオープンからの経緯についての詳細はわからないのですが、MARZはオープンしてから一回オーナーが変わっているんですよ。

そうだったんですか、すこし詳しく教えていただけますか?

初代新宿MARZは、当時のオーナーである松田がオープンし、それから5年くらいの間にMarbleMotionと新宿に店舗を立ち上げていきました。

次々とMARZ系列店がオープンしていた時期ですね。

そうですね。それが、3.11の地震(東日本大震災)をきっかけに、MARZ含めライブハウス店舗の存続が、この先どうなるか分からない、という状況になりました。

地震の影響でライブハウスの売上が落ち込んでしまった?

それはあると思います。これはMARZに限った話ではないのですが、震災が起こった当初は、次々と公演がキャンセルになり、娯楽系はどれも不謹慎では?と言われる風潮もありまして。当時の親会社はパチンコ店なども経営していたみたいですが、そちらも同じく娯楽系なので、やはり売上が落ち込んでしまったという話を聞きました。

それでどうやってMARZを存続することができたのですか?

2011年5月に、主にCD/DVDプレス事業などを行っている「テックトランス」という会社がMARZを買い取りました。自分は、同年10月に入社したので、実質的には二代目MARZからスタッフとして参加した形になります。

そういうことだったのですね。オーナーが変わってMARZに変化はありましたか?

現場のスタッフもそのままテックトランス社に転籍させてもらったので、ただ、経営者が代わっただけという感じで、ライブハウスの中身自体は変わることはありませんでした。

MARZといえばロック系インディーズバンドが出演しているイメージです。ジャンルの方向性などはお店の方針で決めているのですか?

そうですね、でも、15年も立つので、お店の歴史、流れとして自然に変化していった部分もあります。オープン当初はビジュアル系とかハードロック系が多かったようですが、その次の店長に代わってからインディーロック、その中でも勢いのあるバンドが多く出演するようになっていきました。自分はその頃大学生でDJとしてMARZに出演させてもらっていたんです。

メジャーへ駆け上がっていきそうなバンドも多数出ていますよね。

インディーバンドが多く出演するハコとして定着してからは、「サカナクション」や「凛として時雨」など、のちに大ブレイクするようなバンドも出てきました。その次の店長の時代には、店長本人がDJだったこともあって、DJ(クラブ)カルチャーも加味され「the telephones」「the chef cooks me」なども出演するようになりました。最近だと「Yogee New Waves」「HAPPY」「Suchmos」なんかもMARZを多用してくれていました。

キャパ約300人、勢いのついてきたアーティストが集まるハコ

そうそうたる面々ですが、MARZに勢いのあるバンドが集まってくるのはなぜなんでしょうか?

ブッキングの力もありますが、次のステップとしてWWWやクアトロなどの中バコを狙うような、ちょうど勢いのついてきたアーティストにとって、うちはキャパ(約300人)的にもやりやすいハコということで、関係者がプッシュしてくれる場合もあって、自然と集りやすい空気というか土壌があるんです。

なるほど、それでブレイクの予感がしそうなバンドが目立つのですね

設備面でも天井が高くて出音も良いと評判を頂いているので、インディーバンド以外にも時代にあわせてアイドルイベントや、様々なジャンルのアーティストの方に使ってもらっています。

時代とともにライブハウスに求められるものが変化していく部分もあると思いますが、MARZの今後のビジョンを教えてください。

もっと「次世代シーンの象徴」となるようなミュージシャンを輩出していきたいですね。常に新しいものを輩出していく、そういうスタイルを培ってきたライブハウスですので、常に「新しいこと」をやっていける場所でありたいです。

そこはライブハウスに求められる大きな要素の一つだと思いますが、なかなか難しそうですね…。

新しい考えや感性については、やはり若い子の方が絶対的に強いじゃないですか。だから、自分たちスタッフを含め大人があまり干渉しすぎずに(笑)、次の世代に早めにバトンタッチしていくことが大事なんでしょうね。

佐賀県で6年間寮生活、唯一の情報源はラジオだけ(苦笑)

とても潔いご意見で、音楽シーンの未来に新たな期待を感じます。それでは続いて、星原さんの音楽遍歴についてお聞かせください

僕は宮崎県出身で、中学高校と佐賀県で6年間寮生活をしていました。音楽は人並みに好きだったのですが、なにせテレビが見れない環境で、唯一の情報源はラジオだけっていう (苦笑)。

音楽に興味はあったけど、いかんせん情報がなかった?

はい、そんな環境だったので。また、当時の僕にとっては「大都会=福岡」という認識でした。それが修学旅行で東京に来てカルチャーショックを受けて(笑)。絶対に大学は東京に行こうと決心しました。

それで、大学時代に上京して音楽に目覚めたのですか?

う~ん、大学で目覚めたというのはちょっと微妙かもしれないですね(笑)。中高時代が寮生活で真面目な時間を過ごしてきたので、「大学デビューしてやるぞ!」というノリで音楽サークルに出向いたのですが、何というか…、ちょっと違ったんですよ。

音楽サークルのノリとも合わなかった?

サークルで色んな音楽を教えてもらって、それなりに楽しくやっていましたが、心の根底で「自分はこうじゃないんだ」って感じていたかもしれない。長い夏休みに一人旅とかして自分を見つめ直す期間みたいなのに入って。夏休み明けて後期に入ってからは、サークルにもあまり参加せず、図書館でずっと本を読んだり、DVDを観たりと、それがかっこいいなと。いま思えば、正直くすぶっていましたね(笑)。

大学での居場所を失うと、趣味に走る傾向もありそうです。

いや、実際そうなんです(笑)。そんな、くすぶっている時期に、高校時代の友達がDJをやるから(クラブに)来てくれと誘われて。その頃の僕は「DJってナニ?」ってくらい無知だったんですが、とりあえず行くだけ行ってみようと。それはもう、新鮮な体験で、こんな素晴らしいところがあるのか!? と感激しました。

星原さんにはクラブの方が大学の音楽サークルより水が合っていたようですね。

はい、ディープな音楽の会話もできるし、知らない曲ばかりなのに、それがまた、すごくかっこいい曲ばかりで。それからというもの、大学はそっちのけてクラブに通うようになりました。そのうち、当然自分でもDJをやり始めて。DJなら友達がいなくても、1人でもやれますからね(笑)。

それって、DJ(裏)あるある話ですね(笑)。しかし音楽に出会えたのはかけがえのないことです。

そうですね。DJを始めて、色んな所でやっていたのですが、その頃、ここMARZで「soul today」というパーティーがあって、そのイベントに毎月レギュラーDJとしてやらせてもらう機会をもらったんです。

それがMARZと出会うきっかけになったのですね。ところでDJのギャラというのはどれくらいもらえるのですか?

当時の僕の場合ですが、安いと3,000円ぐらいから、学祭などの大きなイベントだと50,000円とかもらっていました。住居はMARZの当時の店長の家に転がり込んで、ギリギリの生活をしてました (笑)。おかげさまで、今も毎月やっている僕主催の「New Action!」というイベントをやらせてもらうようになって、そういう縁が重なり、MARZにブッキングとして入社しました。

歌舞伎町は昔にくらべたらずっと安全。ぜひ遊びに来てください

それでは最後にMARZからメッセージをお願いします。

まずは遊びに来てくれる皆さまへ、ここは歌舞伎町ということでちょっと危ないイメージがあるかもしれませんが、現在は取り締まりも強化されていて、昔に比べたらずっと安全ですので、ぜひとも気軽に遊びに来てください。

今はかなり安全になりましたよね。歌舞伎町のパワーを体感してもらいたいです。

そして、出演者の皆さまには出演者割引でドリンク1杯400円、3杯で1,000円のディスカウントチケットも用意しています。建築構造もユニークで、上階からもライブを観られますし、出音も定評を頂いており、とても使い勝手のよいハコだと自負していますので、ぜひご利用を検討ください。わからないことがあったら、どんなことでも遠慮なく問い合わせて下さいね!

これからも最新のインディーズバンド発信源として注目しています。本日は貴重なお話をありがとうございました。

インタビュー&ライター 浅井陽(取材日 2016年12月)

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西武新宿駅(新宿区)
日本一の歓楽街「歌舞伎町」に面した西武新宿線の駅。PePe・新宿プリンスホテルが入ったレンガ色の高層ビル2Fに直結。メガターミナル新宿駅から1路線だけ離れて位置し、JR東口から徒歩8分程。高架下アメリカンブルバードは2016年に飲食ゾーン「ブリックストリート」に。老舗サウナ「グリーンプラザ新宿」もクリスマスをもって34年の歴史に幕を閉じ、新宿ミラノ座跡地周辺の再開発事業が加速化。