イベント会場の魅力探索ガイド Vol.31
国立競技場
名実ともに日本最高、世紀を越えたスポーツの聖地
東京霞ヶ丘町に位置する、日本を代表する国立のスタジアム。東京2020オリンピック・パラリンピックのメイン会場として、2019年11月完成した。国産木材を用いた日本らしいデザインと最先端の技術、人と環境に優しい設計が施されたスポーツの聖地として、また、緑に親しむ市民に開かれたスタジアムとして、新たな時代とともに歩み始めている。
アスリート・ファーストの高性能な競技スペース
国立競技場の心臓部とも言えるトラック&フィールドは、陸上競技、サッカー、ラグビーなどに対応する先進的な設計。反発力の高い「高速トラック」と呼ばれる全天候型400m×9レーンのトラックと、107m×71mの天然芝ピッチを配置。
天然芝フィールドには、地中温度制御システムや散水・排水設備が埋設され、屋根南側のトップライトで、ピッチ面に効率よく自然光を取り込み、天候や季節に応じて最適なピッチコンディションを維持している。
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森の木漏れ日を創出する、アースカラーの座席
快適さと見やすさを追求した合計67,750席の座席は、森の木漏れ日をイメージした5色のシートカラー(白、黄緑、深緑、濃茶、グレー)で構成され、フィールドに近い部分は濃い色を多く、屋根に近い部分は薄い色を多くランダムに配置し、濃淡のあるモザイク模様になっている。
観客スタンドは足腰に負担をかけない3層構造で、車いす席と同伴者席を全層にバランスよく設置し、ヒアリングループ席も複数エリアに設けられている。
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国産木材を利用した、日本らしいスタジアム
日本の伝統技術と最先端の技術が融合した有機的な建築デザインが特徴。大屋根のトラスは、木材と鉄骨のハイブリッド構造で、カラマツとスギの2種類の集成材を用いている。屋根先端のガラスには、薄膜太陽電池が設置され、自然の力を最大限に活用した環境共生型スタジアムとしている。
シンボルである軒庇(のきびさし)には、47都道府県から調達した森林認証材を使用し、スタジアムの方位に合わせて各県の縦格子を配置。日照と雨を遮る、大樹の木陰のような空間を生み出している。
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世界最高水準のユニバーサルデザイン You Are Here.
国立競技場は、すべての人が快適に利用できるように「世界最高水準のユニバーサルデザイン」を導入。設計段階から障害者団体、子育てグループ、高齢者支援団体などのフィードバックを反映。
スタジアムのアプローチは勾配が緩やかで、通路はバリアフリー。誘導ブロック、音声案内ガイド、手すりの設置、分かりやすいサインなど細部まで徹底したUD環境。車いすやオストメイト対応のアクセシブルトイレ、カームダウンスペースなどの諸室も用意されている。
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暑さ対策と地域防災力 地震に強いスタジアム
東京都の広域避難場所に位置する国立競技場は、「ソフトファーストストーリー制振構造」によりスタジアム全体で高い耐震安全性を確保している。どの席からも外部までトータル15分以内(3層スタンドは10分以内)に安全に避難できる施設設計。コンコースは待避スペースとしても機能し、貯水槽や防災備蓄倉庫、非常用電源も完備。
暑さ対策では、風の大庇と風のテラスで、自然の風をスタジアム内に取り込み、フィールドの上昇気流を利用して熱や湿気を逃す。体感温度を低減させる「気流創出ファン」や「ミスト冷却装置」も併用して、快適な観戦環境を提供する。
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これまでの百年、これからの100年。大地に根ざすスタジアム
国立競技場の歴史は、1924年(大正13年)完成の「明治神宮外苑競技場」が原点。日本初の本格的陸上競技場として、陸上競技のみならず、サッカーやラグビーも行われていた。戦後は連合軍が「ナイルキニック・スタジアム」の名称で使用していた時代もあった。
その後、1958年の第3回アジア競技大会メイン会場として再建された「国立霞ヶ丘競技場(旧)」は、1964年の東京五輪メインスタジアムとなり、以降、ユニバーシアード、世界陸上競技選手権大会、Jリーグ開幕戦など、記憶に残る大会の舞台となった。2014年(平成26年)にその幕を閉じ、現競技場にバトンを引き継いだ。 数々の歴史的瞬間を見守ってきた日本のスポーツの殿堂。その歴史は、日本のスポーツ、文化、技術の進化を示している。
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国立競技場 : 東京都新宿区霞ヶ丘町10-1
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