LiveWalkerが取材したライブハウス・インタビュー特集(全111回・2013年7月〜2020年2月)のアーカイブです。掲載情報は取材当時のものです。

ライブやろうぜ!ステージファイル Vol.106

渋谷SANKAKUは営業終了しました

渋谷 SANKAKU

渋谷SANKAKU について
文化のスクランブル交差点・SHIBUYAに2019年7月15日オープンしたFABTONE INC.運営のライブガレージ。渋谷三丁目エリアに生まれた「三角地帯」は、ミュージシャン、オーディエンス、スタッフが三位一体となってつくる新しい遊び場。「距離の近さ」を生かしたフランクな空間で、みんなで楽しめるオープンマイクイベントや独創的な視点のトーク&ライブ、他ジャンルとのコラボ企画も積極的に展開。平日ランチタイムはまぜそば屋「三角(mikaku)」として営業。
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渋谷SANKAKU公式サイト
[閉店] 渋谷区渋谷3-13-9 エトワールUビルB1
TEL:050-5361-1466
ブッキング・ホールレンタル受付中

ライブハウスの中の人に話を聞いてみた〜 渋谷SANKAKU 編

このコーナーはライブハウスでバンドをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。

渋谷SANKAKU 統括 白水悠氏(左) / 制作・ブッキング 田畑猛氏(右)

本日は2019年7月にオープンした渋谷SANKAKU統括の白水悠さん、制作・ブッキングの田畑猛さんにお話をお伺いします。白水さんには、吉祥寺NEPOでも取材させていただきましたが、今回はSANKAKUについて、オープンの経緯からおしえてください。

白水僕のバンド(KAGERO / I love you Orchestra)が所属しているFABTONE.INCで、ライブハウスをやるという計画が持ち上がり、NEPOの事でライブハウス事業に経験のあった僕がノウハウを出したり、スタッフを集めたりという、統括というポジションでSANKAKUをオープンしました。

「NEPO立ち上げの前に、ライブハウスを作る話があった」と仰っていましたが、それがSANKAKUのことですか?

白水あ、そのあたりの話とは関係ありません。SANKAKUはNEPOのあとに新たに出てきた話で。SANKAKUに関しては、僕自身は経営というよりあくまで運営の統括というポジションです。

NEPOとは掛け持ちのような状況になるのでしょうか?

白水そうですね、2つのライブハウスに携わることになりましたが、それぞれの強みは別々にイメージしています。「NEPO」は、井の頭の森の中で、様々な仕掛けのある「フェス感・スペシャル感」のある場所、「SANKAKU」は渋谷の雑踏の中にある「フランクな場所」という棲み分けで考えています。

アーティスト活動の傍ら、個性的なライブハウス2店舗の運営に携わるのはかなり大変そうです。

白水前回お話しましたとおり、NEPOは共同運営という形で、肩書きとしてはディレクターとして参加していて、経営の根幹に関しては主に森さんにお任せていますし、SANKAKUはシンプルに運営できるシステムを構築しているので、いまのところ時間的な問題は感じませんね。

それでは、SANKAKUのコンセプトをおしえてください。

白水アーティスト、スタッフ、お客さんの3要素が、店名のとおり「SANKAKU=三角」に混ざる場所というイメージです。恵比寿寄りの渋谷という土地柄や、店の規模から、みんなの「たまり場」のようになるといいなと思います。

サウンド面はどうでしょうか?

白水これもコンセプトと同じ方向で、「距離の近さ」を生かした音の空間を考えました。たとえば、NEPOのような世界的にもトップレベルの音響設備はありませんが、シンプルな分、音数が少ない演奏でも引き立ちますし、生音の良さが生きるよう、壁を板張りにするなど工夫しています。

とても心地よい空間で、随所にこだわりがみえますね。

白水ありがとうございます。生演奏のリアリティーを存分に味わっていただきつつ、居心地の良さを考慮して明るい木板を選びました。内装の雰囲気も、お客さんの耳に影響しますからね。

音楽もトークも「表現」としての意志が確立していればOK

つづいて、田畑さんは「もらすとしずむ」としても活動されています。SANKAKUの制作チームとして白水さんが声をかけられたのですか?

白水ライブハウス運営は何といっても制作陣が肝心なので、現役のミュージシャンでありながらイベント制作ができる人、なかでも残響Shop店長として店舗運営の経験もある田畑さんにも加わっていただきました。

田畑これまでに自分主催のイベントを打ってきた経験もあるので、そのノウハウを生かしたいと思います。といっても声をかけていただいたのが先月で、ようやく今月からブッキングがスタートできる段階です。

通常のライブブッキング以外で、田畑さんが考えているアイデアの一部を紹介していただけませんか?

田畑一般的なライブハウスのシステムではハードルが高くてやりにくかったライブや、実験の場となるようなイベントを考えています。たとえば、社会学者さんのトークライブ、ラーメン屋とのコラボ…。

ラーメン屋さんとのコラボとは斬新ですね(笑)。

白水ですね(笑)。音楽以外のことから、おもしろい繋がりが生まれることは多いと思います。「表現」としての意志が確立している事であれば、音楽だろうが、トークだろうが、求められることであればそれで良いと思います。

田畑単なるイベントスペースになってはつまらないので、「ライブハウス」という音楽的下地を活かしながら、他ジャンルとうまく融合したイベントをやっていきたい。音楽演奏にかぎらず、アーティスト本人やその周囲が交流したり、プレゼンしたりできるような…。

それがSANAKUのコンセプトである「たまり場」というわけですね。

田畑座談会とかアーティストの株主総会的なイベント、アーティストのファンを招いて、今後どうしていくべきか、どう応援していくか、そんな話し合いが出来るイベントもおもしろいですよね。こちらから持ちかけて多方面に渡るイベントを打っていきます。

白水さんは以前NEPOの取材でお聞きしましたので、今回は田畑さんのご出身と音楽との出会いについておしえてください。

田畑大阪出身で、幼少の頃からクラシックピアノを習っていました。小6までクラシック以外の音楽は知らなかったんですよ。

クラシック育ちだったのですね。小学生では少数派ですよね。

田畑はい。だから、クラスメイトにからかわれていました(笑)。それが悔しいのもあって、中学時代からいろいろな音楽を聞き始めました。だったら誰よりも詳しくなってやろうと。それで、まずは「B'z」から入りました。

クラシック一筋から国民的ユニットへ、大胆な転換ですね。

田畑当時から大人気でしたからね。そのうち日本のチャートだけでは満たされず、ビルボードも追っかけはじめました。大流行していたバック・ストリート・ボーイズはじめ、売れている音楽にとことん執着していました。

残響Shopの元店長だけに、とても興味深い展開です(笑)。

田畑あるとき、BS番組か何かで放送していた「ウッドストック1999」というアメリカのロックフェスで、オフスプリングがバックストリート・ボーイズのマネキンか何かをバットでぶん殴っている映像を見て、衝撃を受けました。

世界的アイドルがコテンパンにされたのを目撃して、田畑さんの内側で何かが起こった?

田畑それがきっかけで、ロックに目覚めました。それとともに、音楽に強いメッセージが込められているアーティストがいることや、いろんなカルチャーがあることに興味を持つようになって、さまざまなジャンルの音楽を聴くようになりました。

高校卒業後の進路はどうされたのですか?

田畑音楽専門学校のシンガーソングライターコースに入って、ボーカルや音楽理論、作詞作曲を学びました。Cubase(音楽制作ソフト)を使った打ち込み、ゲーム音楽やインストゥルメンタルの曲も好きだったので、歌うことよりも作曲やサウンドクリエイトのほうに傾倒しました。

幅広く音楽を学ぶ課程で、進みたい方向性が明確になった?

田畑もちろんバンドマンにもなりたい憧れはあって、ボーカルのあるコースを選びましたが、やはり自分はクラシックピアノから入っていますし、正直にいえば、DTMによるMIDI音源制作あたりからキャリアアップしていったほうが仕事につながるかなと思いました。

"SANKAKU=三角"に混ざる、みんなの「たまり場」に

その後、どのような経緯で、コアなインディーズロックを扱う残響Shopの店長になられたのでしょうか?

田畑当時は、一音楽ファンとして、ミクシィ(当時流行っていたSNS)や雑誌で楽曲レビューやライブレポを書いていたことがあって、それをみた当時の残響レコード社長から「今度会いませんか?」とメッセージをもらったんですよ。

田畑さんのレビューに光るものを見出したのですね。それで、社長さんとお会いしたと?

田畑大阪の喫茶店でお会いしました。65daysofstaticというイギリスのバンドの来日公演があったタイミングだったと思います。その時に「残響Shopの店舗をオープンするから東京に来ないか?」と話をもらって、上京を決意し、2011年に上京してきました。

渋谷の神南にあった残響shopは、惜しまれながら2015年にクローズしました。田畑さんはいつまで在籍していたのですか?

田畑2013年末頃までです。まあ、やりきったかなと思います。それからは、今回、白水さんに声をかけていただいてSANAKAUに入るまで、別の仕事をしながらバンド活動を続けてきました。

田畑さんにとっても、渋谷SANKAKUで新しいチャレンジが始まるのですね。それでは、最後にSANKAKUからメッセージをおねがいします。

白水演者さん、お客さんにとって「フランクな場所」を作っていきます。いま個人的にSANKAKUで注力しているのは、みんなで楽しめるオープンマイク的なイベント。日本にも、もっとオープンマイクの文化が根付いてくると、ライブハウスの楽しみ方も変わってくると思うので、そういう経験のある外国人のお客さまにも遊びに来てもらえるよう導線を引いていき、盛り上げに繋がればと試みています。

田畑ライブハウス的なハードルは取り払って、やりたいことが実現できる場所です。やってみたいことは何でも気軽に相談していただきたいです。

国境を越えた音楽ファンとアーティストが気軽に集まるライブハウスに期待したいと思います。本日はありがとうございました。

インタビュー&ライター 浅井陽(取材日 2019年9月)

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