ライブやろうぜ!ステージファイル Vol.98
吉祥寺 NEPO
- 吉祥寺NEPO について
- 2019年3月21日、吉祥寺にオープンした、常識にとらわれない振り切った発想の新しいライブスペース。株式会社キルク代表の森大地氏(Temple of Kahn)を中心に、音楽レーベルchemicadrive代表のディレクター白水悠氏(KAGERO etc.)、店長に河野岳人氏(LAGITAGIDA etc.)というミュージシャンの布陣によって、さまざまなアイデアが盛り込まれた極上ロケーション。店名のNEPO(ネポ)は「OPEN」の逆さ&音が歩きだす(音歩)の表現。井の頭公園西側の吉祥寺通り沿い(万助橋バス停前)。
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- 吉祥寺NEPO 公式サイト
三鷹市下連雀1-17-4 GRATO井の頭公園 B1
TEL:0422-26-9614
出演バンド・ホールレンタル受付中(詳細)
ライブハウスの中の人に話を聞いてみた〜 吉祥寺NEPO 編
このコーナーはライブハウスでバンドをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。
このメンバーなら新しいライブハウスがつくれる
本日は吉祥寺NEPO代表の森さん、ディレクターの白水さん、店長の河野さんにお話をお伺いします。みなさんミュージシャンとして活動をされていますが、本企画ではライブハウスの立ち上げや運営、音楽との出会いについてお聞かせ頂きたいです。まずは森さんから、すでにご存知の方も多いと思いますが、簡単に自己紹介とオープンの経緯を教えて下さい。
森Aureoleでバンドデビューして、2010年にkilk recordsというレーベルを立ち上げ、2013年にライブハウスのヒソミネ(宮原)、2016年にカフェbekkan、2017年に神楽音をオープン、そしてこのたび、吉祥寺NEPOをオープンしました。
(前回取材の)神楽音とは提携解消されたとのことですが、次の展開が早くて驚きました。
森自分としては、神楽音のあと、新しい動きはすこしお休みしようと思っていました。そんな矢先、白水くんから「ライブハウスを作りたいので、手伝ってもらいたい」と連絡をもらって…。
そのあたりのNEPO立ち上げまでの流れを教えていただけますか?
白水去年の春先に知人からライブハウス事業の話が来たのですが、同時期に森さんが神楽音を外れる、という話を内々で聞いていたので、これは!と思って相談させてもらったのが始まりです。結局、きっかけとなった知人は関わらなかったのですが。
まさにタイミングと巡り合わせ。
白水森さんとなら、すばらしいライブハウスが作れるな、と思いました。それで、まずは店長の存在が重要だよね、ということで、店長探しからはじめて、森さんの紹介で、河野くんに参加してもらうことになりました。
河野さんは、これまでライブハウス運営のご経験があったのですか?
河野いいえ、それが、全くありません(苦笑)。バンド活動やベースのサポートなど音楽活動はやっていますが、ずっと企業に勤めていたんですよ。だから、ライブハウスは初めてで、わからないことだらけです。体当たりで毎日をクリアーしていく今現在です(笑)。
全く新しいライブハウスをつくる、それを見越した抜てきだったわけですね。
白水河野くんしかありえないですね(断言)!この三人が揃って「噛み合った」と思いました。このメンバーなら新しいライブハウスがつくれると確信しました。
物件探しのほうは、順調に決まったのですか?
白水計画の段階では、駒込、沼袋、神楽坂あたりを検討していました。じつは、駒込(豊島区)の物件で契約直前までまとまったところで、河野くんが勤め先を辞めたんですよ。その直後に、駒込の物件の話が破断しちゃって…。
大きな決断をした河野さん、内心不安だったのでは?
森でも、その全てを投げ打った河野くん本人が「ゆっくり探せばいいよ」って、諭してくれたんだよね(笑)。
白水最終的に、僕の地元でもある、ここ吉祥寺に決まりました。
吉祥寺駅から井の頭公園沿いの景観も楽しめる
森さんは郊外の店舗も経営されていますよね。今回、吉祥寺を選んだ理由は?
森やはり、吉祥寺の魅力はあります。(大宮ヒソミネのある)宮原は都心からは遠いので、なかなか足を運びにくいという人は多いですからね。ヒソミネも一度来てもらえれば、思い浮かべるイメージよりは近いとは思うのですが。
確かに吉祥寺駅からはちょっと距離がありますね。
森そうですね、徒歩約12分です。でも、吉祥寺駅はアクセスも良いですし、散策も楽しいエリア。井の頭公園沿いを歩いてきてもらえれば、四季折々の景観を楽しめるので、それほど問題にはならない距離だと思います。
白水これから春の花見シーズンは、ここまで桜で彩られますよ。
森駅からの距離相応に家賃経費も削減できるので、その分、他に予算をまわせるし、アーティストやお客さんに還元していきます。
手作りの内装も素敵ですね。
森ありがとうございます。今回はカウンターのデザインはdownyの青木ロビンさんに、その他の内装デザインはCamptasさんにやっていただいています。音響面はアコースティックリバイブさんにサポートしてもらいました。このキャパとしては、最高品質の音を体感していただけると自負しています。
森さんの手がけるライブハウスは、プロジェクターを使ったビジュアル演出も特長です。
森今回はさらに、プロジェクターに加えて、複数のカメラによる映像をLEDパネルに映し出すという仕掛けを入れました。VJ演出と同時に、リアルタイムで演奏映像も映し出せます。
プロジェクターの映像とLEDパネルの映像が重なることはないですか?
森大丈夫です。LEDパネルのモニター映像は彩度と明度が高いので、プロジェクターの映像と重なってもモニター映像にはほとんど干渉しません。個々に映像演出をすることも可能ですし、壁に映るVJ映像とモニター映像を融合させるようなこともできます。
話題になっているQRコードの会計システムについて教えてください。
森店内では入場時にお渡しする、リストバンドのQRコードを使って、カウンターのリーダーやスマホからオーダーしてもらいます。お支払いは、おかえりの際にまとめて精算していただく方法です。
カウンターに並ばずにフードやドリンクを注文できる?
森はい、準備ができたらスマホ通知や店内サイネージでお知らせしますので、カウンターですぐにお渡しできます。少しでも開放的な空間を提供したい、という思いがあって、このシステムを導入しました。
すばらしい仕組みだと思います。考えられる可能性として、来場者が多いと出口で会計待ちになることもあるのでは?
森その可能性も考慮していて、“NEPO VIP”という専用のリストバンドも用意しました。割引価格やポイントが付与されるうえ、初回登録の手続きをしてもらえれば、会計に並ばずに完全フリーで楽しめます。(※編注 NEPOの会計システム)
業界では初の試みですね。
森システムの導入は、十分にシミュレーションを重ねているつもりではありますが、もし、問題があったり、ご要望を頂いたりした時は、その都度トライアル&エラーでスピーディーに改善していきます。
うまく回れば、ライブハウスのような狭いところに人が集まる空間にとって最高の仕組みですね。NEPOの様子をみて、真似てくるお店も出てくる気がします。
森それは良いことだと思います。でも、せっかくなら「NEPOの影響を受けて…」と言ってくれたら嬉しいかな(笑)。
2017年に自主レーベル“chemicadrive”スタート(白水)
つづいて、音楽との出会いや音楽の世界へ入ってきた経緯を教えてください。森さんは、前回特集させて頂いたので、今回は河野さんと白水さんにお伺いしたいと思います。では、白水さんからお願いします。
白水15歳くらいからバンドを始めました。高校時代に、GREEN DAYやハイスタンダード、KEMURI、あとビジュアル系のコピーバンドから始まって、大学卒業後は週5でバイトしながらバンド活動を続けていました。
大学卒業後は、あえて就職しなかったのでしょうか?
白水はい。在学中から、卒業後の進路は悩んでいましたが、仕事も音楽もどちらにせよ、やるなら徹底的にやりたいと思っていて、最終的に音楽の道を選びました。でも、基本何やっても飽きやすい性分だったので、音楽以外にハマれるものがなかった、とも言えますね(苦笑)。音楽だけは猛烈に取り組むことが出来たんです。KAGERO、I love you Orchestraの活動も、全て人の縁だと思っています。
その後のレーベル設立の流れもお願いします。
白水2009年より、KAGERO、I love you Orchstra共に音楽やイベント制作を行なうFABTONE.INCと契約していますが、2017年に、FABTONE.INC内で、アーティスト活動で得てきたノウハウを活かした新しい作品発表の場として、自主レーベル「chemicadrive(ケミカドライヴ)」を創らせてもらいました。ミュージシャン、レーベルに加えて、今回のライブハウス事業に繋がりました。
まさか自分が、ライブハウスの店長をやるとは(河野)
続いて、河野さんの音楽との出会いを聞かせてください。
河野出身である茨城の田舎で、ビジュアル系から入りました。
どのようなきっかけでビジュアル系に?
河野中学時代に、LUNA SEA、X JAPANなどのビジュアル系に異常なくらい詳しい奴がいたんですよ。彼の布教活動によるところが大きかったのではないかと(笑)。
ビジュアル系ロックの導きを受けた?
河野もれなく洗礼を受けました(笑)。中2のときにコピーバンドを組んで、文化祭に出ようと思っていたら、中3の時に生徒が増えすぎたという理由で学校が2つに分かれちゃいまして。
ええ?そんなことがあるのですか!?
河野場所も含めて別々になり、メンバーが散り散りになったんです。文化祭にも出られなくなってしまったので、校長に直談判して体育館を借りてライブをやらせてもらいました。
中学時代の文化祭ライブは青春そのものですからね。高校でも音楽活動を?
河野高校に行くころには、ロッキングオンやラジオで洋楽を知りました。レディオヘッドから始まり、聴く音楽全てに影響されていました。僕はミーハーなのかもしれない(笑)。
ミーハー(笑)。河野さんは、会社勤めしながらバンド活動を続けてこられた着実な側面もありますよね?
河野企業で働きながら、その合間を縫って音楽活動をするという生活を長年してきました。本格的にバンド活動をはじめたのは結構遅いんですよ。毎月ライブをやるようになったのは25歳くらいになってからで。
バンド活動が増えていった理由は?
河野おもしろいバンドメンバーと出会ってしまって、インディーズでずっと活動しながら、ベースのサポート案件をもらったりもしました。一時はそっち(サポート業)を頑張ってみようかと思ったこともあります。
仕事と音楽活動とのバランスは一貫していたわけですね。
河野なかなか厳しい世界なので、仕事は仕事で生活費を稼ぎながら、それでも野望を持って真剣に音楽活動をする、というスタンスは維持してきたのですが…。
仕事と音楽の棲み分け…のはずの河野さんが今は?
河野ここ(NEPO)に居るんですよね(笑)!サラリーマン一筋と考えていたわけではないですが、まさか、ライブハウスの店長をやるという発想はなかったです。
森さんと白水さんによれば、河野さんこそ、店長に適任とのことですよ。
河野いや、その自覚もなかったです(笑)。でも、先入観やセオリーみたいなものが何ひとつないのは、ある意味それがプラスの要素かもしれない、そう思っています。
3人が年を重ねて好きになったなもの、理想を具現化した空間
それではNEPOの店長、河野さんから皆さんにメッセージをお願いします。
河野そういった経緯で、運営サイドを経験したことがないので、他のお店のような、いわゆるライブハウス店長さんのようにはなれないかもしれませんが、森さん、白水くんに教えてもらいながら、社会人、プレイヤーを経験した中で培ったバランス感覚を活かして、楽しい場所を作っていきたいと思います。
スケジュール通りに進みますと、この記事はNEPOオープン(3/21)翌日の公開です(取材日は3月初旬)。NEPOディレクターの白水さんからもメッセージをお願いします。
白水アメリカやアジアに何度かライヴ・ツアーで行かせて頂いている経験上、日本の文化的にも、お客さんにとってライブハウスというのは特別な場所だし、なかなか日常的な存在になるのは難しいですよね。だから、フェスやイベントに行くような感覚で、来てもらえる場所、「スペシャルな遊び場」であることにこだわりたい。単純に「ライブを観た」ではなく、「NEPOというおもしろい空間でライブを楽しんだ。次も“NEPOで”ライブを観たい」と思ってもらえる場所を目指していきます。
最後に、代表の森さんからメッセージをお願いします。
森白水くんの話ともつながりますが、音楽にとって「ロケーション」はとても重要なもので、映像や音、飲食メニューやキャッスレスシステムによって、NEPO独自の「ロケーション」を作りました。今回は、いままでのライブハウスはちょっと苦手だな…、という方にも気に入ってもらえるはずです。僕ら3人が年を重ねながら、好きになってきたもの、理想を具現化した空間を、皆さんのお気に入りの場所にしていただければ嬉しいです。
ライブハウスの新基軸=NEPOの今後の飛躍を期待しています。本日はありがとうございました。
インタビュー&ライター 浅井陽 (取材日 2019年3月)
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