ライブやろうぜ!ステージファイル Vol.46
新宿 SAMURAI
- 新宿SAMURAIについて
- 多様な人と文化が交感するアジア最大級の歓楽街・新宿歌舞伎町、コリアンタウンとして知られる職安通りのビル地下(新宿URGA跡)に2016年6月オープン。「居心地の良さ」をキーポイントに、これまでアーティストに近い立場でレーベルやマネジメントに携わってきたスタッフによる、従来のライブハウス像にしばられないフレッシュな感覚でのハコ運営が特長。ライブハウスシーン新時代への起爆剤となる志士の動向に注目が集まる。
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- 新宿SAMURAI公式サイト
新宿区歌舞伎町2-42-16 第2大瀧ビルB1
TEL: 03-5287-3390
E-mail:info@live-samurai.jp
ライブハウスの中の人に話を聞いてみた〜 新宿SAMURAI編
このコーナーはライブハウスでバンドをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。
新宿SAMURAI店長 大橋隼平 氏
本日は「新宿SAMURAI」店長の大橋さんにお話をお伺いします。ここは、先日(※取材日は2016年9月)まで「新宿URGA(ウルガ)」でした。オープンまでの経緯を教えてください。オープンはいつになりますか?
今年(2016年)の6月11日にオープンしました。前店舗のURGAさんを居抜きの形で出店させて頂きました。基本的なものはURGAさんからの引き継いだもので、内装や一部の機材をリニューアルして、SAMURAI独自のカラーを打ち出しました。
ウルガ時代の超個性的な雰囲気から変化しましたね。
ライブハウスって基本「黒」じゃないですか? でも、よく見ると、うちは濃紺なんです。床も木材ですし、ステージは赤に仕上げています。よくある、ライブハウスの黒色一辺倒の重々しい雰囲気にしたくなかったんです。
とても洗練された、おしゃれな空間だと思います。
オープンにあたっては「居心地の良い場所にする」というのはポイントにしていました。でも、大きく変わったのは内装だけで、メインとなる卓もスピーカーも変わっていないんですよ。なのに、多くの人から(URGAの頃より)「音が良くなった」とも言っていただいています。
音響関係の機材はそのままなのに?
はい、もちろん追加した機材等はありますし、PAの力量という要因も大きくあると思いますが、おそらくそこは心理的な影響も大きいだと思います。内装が変わって、スタッフも明るく対応する。当たり前ですが、普通にやってもらって嬉しいサービスをやった結果、音楽に耳が行いくようになったのかなと。もちろん、URGAさん時代や、いわゆるライブハウスの雰囲気もバンドマンに愛されていると思うので、そこは好みの問題ですが。
ライブハウス未経験者を中心に立ち上げた
このような方向で変化していった理由は?
経緯としては、新宿SAMURAI の経営陣及び、店長である私もそうなんですけど、ライブハウス未経験者を中心に立ち上げを行ったからだと思います。
ライブハウス経験者がほとんどいない? 興味深いですね。
当店のオーナー自体がマネージメント、レーベル畑の人間で、ライブハウス経験はなく、立ち上げ時のメンバーもほぼ経験者がいない状況でした。私も、「deronderonderon」というバンドのマネージメントをしていて、その活動の中で出来た繋がりで店長をやらせて頂く事になりました。
実際に「ライブハウス経験者不在」でのオープンはどうでしたか?
当然、ライブハウス立ち上げのノウハウがゼロですから時間も労力もかかりました。
では、逆に経験が無くてよかった事はありましたか?
はい。正直、良かった方が多かったと思っています。ライブハウスの既成概念に捕らわれず、お客さん、マネージメント、レーベルサイドの目線で、客観的に「ライブハウス」というものを見ることが出来ていると思います。スタッフは小さい箱からホールクラスまで、全国のライブハウスを利用してきた側なので、ライブハウスの良かった所は全部取り入れるようにしたつもりです。 また、スタッフの採用は私が行っておりますが、既成概念に捕らわれないアイデアが欲しいという理由で、基本的にはスタッフも未経験者を採用しています。
どのようなスタッフが揃っているのですか?
経営陣、ブッキングセクションには大型フェスに出ていたり、ホールクラスでワンマンライブを行っていたりするアーティストのマネージャーがおります。また、某大型CDショップのバイヤー、イベント担当をしていた人間なんかも在籍しております。
まさにクロスメディア、多角的に展開できそうですね。
まさにそうなんですけど、実は、メディア展開に関しては慎重に行っていこうと思っているところです。
慎重に? なぜですか?
まずは「自分たちで出来る事を提案していく」というやり方をしようと思っています。オープンに際してのプロモーションも、ほとんどしていません。自分たちの出来る事を着実に進めて、口伝いで広まっていくような、着実な歩みを踏めたらと思っております。
とても堅実な方針ですね
スタッフがレーベルやマネージメントをやっているって事があまり露骨になってしまうと、デビュー展開ありきで来られてしまって、ライブハウスとしての魅力は減ってしまうと思うんです。オーディション箱にはしたくないと思っています。
バンド、お客さん、箱、すべてにフェアでありたい
どのようなライブハウスを目指しているのですか?
まずは、アーティストさんが選びやすい箱にしたいです。例えば、今は、ノルマを取る取らないなんて話がホットだとは思いますけど、逆に「ノルマを払ってでも出たい箱ってどこ?」みたいな部分を追求していきたいと思っています。
ノルマが無くても、お客さんを呼びにくい雰囲気の箱もありますからね。
そうなんです。出演するアーティストにとってプラスになる場所であること、そしてお客さんが気持ちよくライブを楽しめる環境づくりも大切にしています。アーティスト、お客さん、ライブハウス、すべてにフェアでありたい。そのために何ができるかを日々考えながら、1日1個変化をつくる、という気持ちでやっています。
コラボドリンクなどBARメニューもこだわってますね。ボトルキープもできるんですか!?
そうなんです。関係者やバンドマンがボトルキープしてくれてますが、『また来ます』という愛情表現だと思って入れてもらう度に嬉しいなあって思っています。
サラリーマンから一念発起して好きな事にチャレンジした
では続いて、大橋さんと音楽との出会いを教えてください。出身はどちらですか?
僕は新潟出身です。高校生ぐらいから、ギターを弾いたり、友だちとバンドを組んだりしていました。大学進学を機に横浜に住みはじめて、在学中は趣味程度でしたが、むしろサラリーマンになってから、ガッツリとバンド活動やるようになりました。
社会人になってからの方がバンドに本腰いれていたのですか(笑)?
いや、なにせ、月曜から金曜まで定時で働いて帰る、というのが面白くなくて、それよりもっと有意義に過ごしたいと思い、土日をバンド活動にあてたんです。
どんなバンドをやっていたのでしょう?
BUMP OF CHICKENやSyrup 16gが好きで、日本語詞のロックをやっていました。ただ、僕はブッキングライブには出た事がないんです。
となると、ライブ活動は?
自主企画でライブしていました。あるイベントで後に大ブレイクする某有名バンドと対バンして「これはすごい良いバンドがいた!」と感動した経験があります。と同時に、その頃から裏方の仕事がだんだん楽しくなってきたんです。それでバンド活動はやめて、サラリーマンをしながら、月一ペースでイベントを組んだり、バンドをサポートしたりするようになりました。
そんな中、本業として音楽業界に飛び込もうと思ったきっかけは何だったのですか?
22〜26歳までの5年間、音楽とは関係のないIT関連の会社で働いていたんですが、仕事が忙しすぎて休みもなくて体調を壊し…、そんな時、震災の時期がかぶったこともあり、一念発起して、好きな事にチャレンジしてみようと決意したんです。
思いきった決断ですね。でも、かなり苦境もあったんじゃないですか?
辞めるときは、意外とすんなり辞めたのですが、その後が地獄でしたね(笑)。好きな物でご飯を食べるっていう事の厳しさを痛感しました。サラリーマンを辞めてから今のライブハウスに入るまでの4、5年は、まさに地を這うような生活をしていました(笑)。
音楽業界でフリーランスは相当にハードかと…。
はい。何をどうやったらいいのか分からないから、給料もないまま全てを一から実地で覚えなければなりませんでした。CD流通の仕組み、フェスやサーキットイベントの出演から音楽メディアでのプロモーションに至るまで、右も左も分からない所からのスタートで、だいぶ苦汁もなめました(笑)。
横のつながりが仕事やチャンスに結びつくことも多い世界です。
そうなんですよ!そんな折、旧知の知り合いが地方のサーキットイベントを組んでいて、マネージメントしていたバンドを呼んでもらったんです。そこで挨拶まわりしたことをきっかけに、一気に状況が変わりました。
人脈の重要さを改めて感じさせられるエピソードです。
ほんと、音楽業界ほど人脈で繋がってる所って無いんじゃないですかね!? 良くも悪くも、人のつながりなので、正しい評価なのかも分からないですね。怖いなあ(苦笑)。
同感です(笑)。それでは最後に新宿SAMURAIからメッセージお願いします。
新宿SAMURAIは(2016年)6月11日にオープンしました。歩きだしたばかりの新人ライブハウスで、まだまだ足りない所もありますが、より良いライブハウスに成長していくために、お客さんも出演者の方も、気になったところは遠慮なくどんどん言って欲しいです。「意見箱」も設置しておりますし、ライブハウス内かしこに“遊び”を取り入れてますので、まずは気軽に遊びに来て下さい!
取材中も、ちょっと目をやると色々な“遊び”を発見できました。本日は貴重なお話をありがとうございました。
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