ライブやろうぜ!ステージファイル Vol.43
高円寺 STAX FRED
- 高円寺STAX FREDについて
- ミュージシャンが自身で育っていける箱をコンセプトに2003年6月オープン。生音の醍醐味と質の高いステージ、長居したくなる雰囲気の良さで、ミュージシャン・お客さんの双方から着実な支持を集めているアコースティック専門ライブハウス。出演の音源審査では、マスターの中村氏が自分の耳で聴き、スケジュールを組み、店内に流れる音楽(SE)や内装にも粋な心くばりが溢れる。白黒の向こう、情熱を内に宿した小さな赤い部屋は、人と音を大切にする歌唄いたちのオアシスである。
- 高円寺STAX FREDへのお問い合わせ
- STAX FRED 公式サイト
杉並区梅里1-7-1 丸山ハウスB1
TEL:03-5456-5038
出演アコースティック・アーティスト募集中
ライブハウスの中の人に話を聞いてみた〜 高円寺STAX FRED編
このコーナーはライブハウスでバンドをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。
本日は高円寺STAX FRED店長の、中村久景さんにお話をお伺いします。まずはオープンの経緯を教えてください。
2003年6月オープンなので、今年で13年目です。2001年までは音楽活動を続けていたのですが、いつしかプレイヤー、というより裏方をやりたいな…と、そんなことを考えているうちに、気が付けばライブハウスを作っていた、という感じですね(笑)。
オープンは順調に進んだのですか?
計画してから、店を立ち上げるまでに2年ぐらい(準備に時間が)かかっています。
すばらしい熱意です!オープン後の状況はどうでしたか?
全然回せていなかったですね。オープン当初はバイトをしていました。
STAX FREDはアコースティック専門ということですが、アコースティックのみにこだわった理由は?
実力のあるアーティストが演奏するアコースティックに触れて、良いものだな、というところからです。当然アコースティックが、弾語りが好きというのもあります。それと防音設備等の経済的な理由もありました。
バンドに対応した防音設備を完備するのは、やはり負担が大きい?
そうですね。
オープンの場所は高円寺と決めていたんですか?
いや、都内で物件を探していて、偶然この物件を見つけただけです。そもそも新高円寺という街をあまり知らなかったんですよ(笑)。
高円寺はライブハウスの競争が激しいエリアですがそのあたりは?
そこは、あまり考えた事がないですね。競争してもしょうがないですし。
STAX FREDの出演オーディションについて教えて下さい。
まずは、直接お店に来ていただくか、音源を郵送して頂いています。あまり沢山の音源を送ってもらっても対応できないので、原則的にメールでの応募は受け付けていません。まあ、単純に、僕自身の時間が限られているからなので、知人の紹介等があればメールで審査することもあります。
「誰でも出演できる箱」にはしたくないので、デモ音源は全部チェックしている
オーディション合格の基準は、やはりある程度のレベルが求められるのですか?
聴きにこられるお客さんのことを考えますと「誰でも出演できる箱」にはしたくないと思っていますので、デモ音源は全部チェックしています。デモの段階でお断りさせて頂く事もあります。
オーディションがないハコも多いので、STAX FRED出演のハードルは高そうですね。
そこは好きずき、というか、お店との相性もあります。みなさん、一生懸命やっていると思いますので、当たり前ですが、僕(の判断)が必ずしも正しいというわけではありません。何回かお断りしても、くじけずに音源を送ってくれる方が稀にいるんですよ。そういう場合は「まずは、半年やってみようか?」となるようなケースもあります。
最近は、弾き語りミュージシャンの人口が増えてきていますよね。
はい、人数は増えていると思います。
それでは続いて、中村さんと音楽の出会いについてお聞かせください。
兄の影響もあり、物心付いた頃には音楽を聴いていました。1番最初は幼少の頃、映画音楽などでした。親父が流す映画音楽、クラシックを聴くともなしに聴いていたりしました。最初に音源を買ったのは、小6ぐらいの時のSex Pistolsです。
小6でパンクですか(笑)。
パンクというジャンルより、Sex Pistolsが好きでした。というかそれしかしらなかったです。そこから、The Rolling Stones、The Beatles、Led Zeppelin、Jimi Hendrixを聴くようになりました。ギターを弾き始めたのが、高1ぐらいだったと思います。ちょうど15歳の時にアメリカにいまして、そこで様々な音楽を聴きました。
アリゾナのライブハウスでGuns N' Rosesをみて衝撃
15才で単身アメリカへ!?
そうですね。もちろん家族の協力があってのことですが。僕がアメリカにいた時は、ちょうどGuns N' Rosesがデビューしたときで、アリゾナのライブハウスで彼らのライブを観たんですよ。その年には、スティング、ミック・ジャガー、Yesも観ました。それはもう衝撃を受けましたね。
凄いメンツですね! デビューしたばかりのGN'Rはどうでしたか?
『チームびっくり人間』に見えましたね(笑)。とにかくかっこよかった。アクセル・ローズにはびっくりしました。どこから声出してるんだよ!って(笑)。
本場のアメリカで、ロックファンが羨むお宝体験です。
当時は、まだ全然なにも分かっていない頃だったので、今にして思えば少し残念ですが、とにかく衝撃でしたね。それから1年ちょっとで帰国して、日本の高校に復学し、ギターで作曲したり、バンドをやったり、大学進学後もバンドやユニットを組んで活動していました。
プロを目指していた?
はい。一緒に活動していた仲間に、原文雄という作曲家がいるのですが、彼は「大学を出た後は音楽の専門学校に行って、現代音楽を作りたい」と言っていて、のちに作曲家になり、現在も作曲家としてやっています。僕は結婚した後も、会社を辞めて、音楽活動をやっていたんですけど、どこにもひっかかれない状態が続きまして。才能がなかったんです。
やはりプロの世界は厳しいのですね。
当然そうだと思います。プロになれたことがないのではっきりとはお答えできませんが…。(音楽を)作るのは好きですが、人前に立つというポジションがしっくり来なかったんですよね。うまくもありませんでしたし。若い頃は(人の)前に出たい気持ちがあったと思うんですけど、次第に、なんとなくズレを感じてきて…。いつしか裏方やお店をやりたいと思っている自分がいました。
そうして今のベストポジションにたどり着いたのですね。
そうですね。今の立ち位置が自分には合っていると思います。まあそれでも、結局は得意じゃない事もしないといけないんですけどね(笑)。
井戸を掘り起こすみたいに、自分を掘り下げて欲しい
ミュージシャン、ライブに関わる人にSTAX FREDからメッセージをお願いします。
アーティストとしては、自分を掘り下げて欲しいですね。井戸を掘り起こすみたいに。廻りをよく観ることで客観性を伴い、自分を下に掘っていくことで、自分ですら未発見だった自分に気付いて、喜んで欲しいです。継続の糧にしていけたらいいんじゃないかな、と。ライブに関しては、お客さんに「また見てみたい 逢いたい」と思ってもらえるライブをして欲しいですね。圧倒的なライブをして欲しいです。一方、「人」に対しては、あまり利己的になり過ぎない方が良いのではないかと思います。
アーティスト活動をする上では、現場と混ざり合える心構えも重要だということですね。
はい、ある程度は。ライブは複数の人でつくり上げるものなので、まずは最低限のTPOは持っていて欲しいです。それと、どう説明すればいいんだろう…。たとえ良い事を言っていても「お前が言うと、聞く気がしない!」ってケースあるじゃないですか?
はい、よくあります(笑)
それだと、どんなに大胆なことをやっていても伝わらない。『痒い所に手が届く人』である必要があるんだと思うんです。たとえば「体が凝っている」と言われると、多くの人は(なにも考えずに)肩を揉んでくる、でも凝っている箇所は足だったりすることもある。その場の状況を機敏に感じ取って柔軟に対応できる、そういう要所をしっかりつかめる人であって欲しいなと思います。
なるほど、耳が痛いです(笑)。
僕自身も言っていて、自分の耳が痛いです。痒いところに手が届くひとに、僕も可能ならなりたいと思っています。 STAX FREDで演奏する人たちには、存分に好きにやって欲しいですね。あとはつまらない事で音楽を嫌いにならないで欲しいとおもっています。
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