ライブやろうぜ!ステージファイル Vol.29
ロックンロール以外は全部嘘
- ロックンロール以外は全部嘘 について
- ロックバンド『ブルボンズ』のボーカル&ギターのカトウタクミが新宿歌舞伎町に2014年11月オープンしたライブバー。ライブハウスやバーがひしめく娯楽激戦区の一角にあるビル7階の一室。そこに、加藤氏の音と時間と空間に対する理想とこだわりが凝縮された「ロックンロール以外は全部嘘」はたたずんでいる。来る人間の脳裏に焼きつく強烈な店名もその表れだと言えよう。シニカルな要素を含みながら、いつまでも居られる心地良さ。ライブバーというフィールドに、また新たな解釈を持ち込んだお店なのかもしれない。
- ロックンロール以外は全部嘘 ご案内
- ロックンロール以外は全部嘘
[閉店] 新宿区歌舞伎町2-45-4 第2与三郎ビル7F
TEL:090-6567-5817
※アコースティック・DJイベント募集中
チケットノルマなし・音源審査あり(出演希望者は音源を直接持っていくかメールで添付送付。)
ライブBARの中の人に話を聞いてみた〜ロックンロール以外は全部嘘 編
このコーナーはライブバーでバンドをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。
新宿 ロックンロール以外は全部嘘 代表 加藤巧 氏
本日は新宿のライブバー『ロックンロール以外は全部嘘』代表の加藤さんにお話を伺います。新宿のライブバーとしては新しいお店で一周年と聞きました。
今月(2015年11月)で一周年です。以前は池袋にあるadm(アダム)というライブハウスに7年ほどいたのですが、自分でお店を持ちたくなったのでアダムを辞めてここを立ち上げることにしました。
ライブハウスではなくライブバー形式のお店にしたのですね?
現実的な問題を言っちゃうと、ライブハウスを作るまでの予算がなかったというのもありますが、それとは別に「こういう店を作りたかった」という想いがありました。
その想い、お店の内装や店名にも表れていますね。
この店の名前は、僕がやっているバンド(ブルボンズ)の曲名である、『ロックンロール以外は全部嘘』(2009年3月シングルリリース/アルバムBULLBONE'S NEXT他収録)をそのまま店名にしました。
一度聞いたら忘れられない、すてきなネーミングです。いわゆる「ロックンロール一筋」なお店かと思っていました。
バンドの別の曲では『ジャズは俺の呼吸』って歌詞もありますからね(笑)。ジャンル問わず、いろいろな音楽が好きですし、いろいろななジャンルの方が出演してくれていますよ。
歌詞の吸引力が半端ないですね! お店の立地場所は最初から新宿を考えていたのでしょうか?
物件を探している時に、ここの場所を見つけてピンと来ました。完全に勘ですね。
勘ですか(笑)。
ほんとは池袋の方が自宅も近いし、都合がよかったのですが…(笑)。
好きなお酒と好きなレコードをそろえた、自分が居心地が良いと思えるお店。
では次に、加藤さんの考えるお店のモットーなどをお聞かせください。
自分が居心地がよいと思えるお店であることですね。お酒も自分が好きなものを入れていますし、何より自分が好きなレコードをそろえています。
ここにあるアナログレコードは全部加藤さんのものですか?
そうです。CDまで持ってきちゃうと入りきらないのでアナログレコードだけにしています。そんなですから、ここって自分の部屋とほとんど変わらないんですよ (笑)。
自分の部屋をお客さんと共有しているかのようですね。
ホントそうですね。レコードの音についても、多くのお客さんは、DJのターンテーブルで使われるようなレコードプレイヤーでしか聴いたことがない人が多いと思いますが、ちゃんとしたレコードプレイヤーで聴いてもらって「こんなにも音が違うんだ!?」というのを体感してほしいです。
やはり再生専用のレコードプレイヤーの音は断然良いのですね?
良いですね。僕はオーディオ機器も好きなんですよ。
音質に対するこだわりは音楽家の責任でもあると思います。
音に関しては、ブルボンズのレコーディングを通して、吉祥寺にあるGOK SOUNDスタジオの近藤さん(近藤祥昭氏・エンジニア)から、いろいろなものを学ばせてもらいました。もう10年近くずっとGOK SOUNDで録ってますし、ブルボンズの最新のアルバム(「Wake Up New Orleans」2015年7月リリース)もGOK SOUNDで録りました。
GOK SOUNDの近藤さんには以前取材させて頂きました。GOKの部屋鳴り楽器の鳴り、録音哲学は芸術的で、近藤さんの職人魂を感じました。
その通りだと思います。出来れば、GOK SOUNDでアナログレコーディングしたものをデジタル化しないでそのままレコードにしたいんですけどね。いまのところまだレコードにはしていないので、レコードに出来たら最高です。
アコースティックなサウンドにはこだわっています。
加藤さんの音に対する真摯な姿勢が伺えます。そのこだわりはお店にも影響していますか?
お店の規模が大きくはないので大きな音は出せませんが、アコースティックなサウンドにはこだわっています。ちょっとずつ良い機材をそろえて使って、吸音はしないようにしています。
そういえば吸音材がないですね。
勘違いしている人が多いと思うのですが、吸音材って、「部屋の中の音」が吸収されるだけで、外に漏れる音量は変わらないんですよ。
え、そうなんですか? 外部への遮音効果もあるかと思っていました。
なので、お店の中では吸音せずに音がいっぱい反射して響くようにしています。吸音しちゃって音が響かなくなるなんてもったいなことですからね。こういうタイプのお店の中では結構良い音を出せると思います。
この音へのこだわり…、加藤さんと音楽の出会いも気になります。
小学校6年生の時、友達にスタンド・バイ・ミー(1986年公開のアメリカ映画)のサウンドトラックを聴かせてもらって。あの主題歌、すごく良い曲じゃないですか。その後、スタンド・バイ・ミーという曲は、ベン・E・キングだけじゃなくて、ジョン・レノンも歌っていることを知って、初めてそのCD(ジョン・レノンのスタンド・バイ・ミー)を買いました。
小6ですか。ロックカルチャーへの反応、早かったですね。
でも小学校の頃は、それ以外の音楽は興味がなかったですね。当時のヒット曲なんかも興味なくて、むしろ野球にしか興味がなかったです。
野球少年! 見た目からしても意外です(笑)。
中学に入ってからは、友達のお兄さんの影響でビートルズとローリングストーンズを聴いていました。日本のバンドでは唯一ブルーハーツだけが好きでしたね。
一点集中で聴き込むタイプですね?
そうですね。曲を作った背景なども含めて、かなり深く聴き込むタイプです。
本気で音楽をやるようになったのは『ブルボンズ』を始めてから。
バンドを始めたのはいつ頃からでしょうか?
僕はバンドを始めるのは結構遅くて、20才の時に初めてバンドを組みました。
小6でロックに目覚めていた割には、確かに遅めですね。
当時はトラックの運転手をやっていて、その後28才になるまで続けるのですが、26才くらいまでは社会人バンド的な感覚で、遊びの一環という感じでした。
ガテン系だったとは! 見た目からしてもやっぱり意外です(笑)。その後、本格的バンド活動のスイッチが入ったのは?
ブルボンズをやりだしてから本格的に取り組むようになりました。それまでの、ゆるくバンドをやっていた頃は売れようだなんて思ってなかったし、ライブも月一本くらいしかやってなかった。でもその内に、少なからずお客さんも付くようになって、いつの間にか本気で音楽をやるようになっていました。
トラック運転手を辞めるキッカケにもなったのですね?
そうですね。運転手をやめてライブハウスで働くことにしました。ちょうどブルボンズの1stアルバム(『絶望の果てに立ち、口笛を吹け』2005年9月14日リリース)を出すタイミングでもありました。
そこからブルボンズの本格的な活動につながるのですね。ところで、バンドとライブバー経営の両立となると、「音楽的」にも「お酒的」にも体に響きませんか?
今月(※取材時 2015年11月)はハードでしたね。一周年記念月間なので、ホントに毎日飲みすぎです(笑)。時にはそこらのソファーで寝ちゃってましたが(笑)、とにかく一周年を迎えて、毎日何かしらイベントをやっていました。
寝る、というより倒れている感じですが(笑)、一周年おめでとうございます。それでは最後に、加藤さんからのメッセージをお願いします。
ライブハウスだと、ライブが終わったら即撤収、解散みたいなシステマチックなところもあるけれど、ここではもっと自由に楽しんでほしいと思っています。ライブが終わった後も、みんなでゆっくり出来る場所でありたい。時間の許す限り飲んで楽しんでくれたらなあと思います
ライブのその後も楽しんでほしいということですね。
うちは、夜19:00からオープンして朝まで営業していることが多いんですが、ライブはその内の二時間ほどで、その後はバーの時間が続きます。ライブの余韻でレコードを聴いたり、お酒を飲んだりして楽しんでくれたらうれしいです。
ライブ後の余韻に浸る、多くの人が求めている理想の場所だと思いました。ところで、あそこに20世紀少年の絵が書かれているレコードがありますね。
あのレコードは、アダムで働いていた時に浦沢直樹さんがたまにライブをしていたので、僕の好きなアルバムに描いてもらったものです。
浦沢さんが漫画界きってのロックファンで有名ですからね。ちなみレコードはお客さんが好きなのをかけてよいのですか?
はい、聴きたいときに言ってくれればいつでも流しますよ!
本日はすてきなお話、ありがとうございました。
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