ライブやろうぜ!ステージファイル Vol.54
アンコール 渋谷
- アンコール渋谷について
- 渋谷駅東口・六本木通り沿いに2007年5月オープン。アコースティック系アーティストをメインに、ネイザン・イースト、T-SQUARE安藤正容、DEPAPEPE三浦拓也など実力派ミュージシャンも多数出演。一流の演奏を間近で体感できるだけでなく、「ライブという本物の場でこそ、本物が磨かれる」という理念のもと、トッププロと同じステージに立ち、チャレンジし、成長していける環境を提供。至近にボイストレーニングスクール「ニューベリーサウンド」を運営。
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- アンコール渋谷
[閉店] 渋谷区渋谷3-7-2 第3矢木ビルB1
TEL:03-5935-8425
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ライブハウスの中の人に話を聞いてみた〜 アンコール渋谷編
このコーナーはライブハウスでバンドをサポートしてくれる「中の人」に突撃インタビューして色々お話を聞いてしまおうというコーナーです。中の人の皆様、ご協力ありがとうございました。
アンコール渋谷(Encore Shibuya)店長 高橋耕二氏
本日は「アンコール渋谷」店長の高橋耕二さんにお話をお伺いします。よろしくお願いします。オープンはいつになりますか?
2007年5月13日オープンで、来年(2017年)で10年になります。当店のオーナー(小泉誠司)が作曲・編曲家、ボイストレーナーとして『今の日本の音楽を変えたい!』という強い想いで活動しているなか、その拠点となるライブハウスを作ろう、ということでオープンしました。
高橋さんはアンコールの立ち上げからのメンバーになりますか?
はい、そうですね。でも、開店当初からいるのは、もう僕だけになっちゃいましたけど(苦笑)。オーナーは親会社の音楽事務所(株式会社ニューベリーサウンド)の方でメインに活動しており、ライブハウスの方は僕が担当しています。
それにしてもオーナーさんの想い、熱いですね!
はい、オーナーはバークリー音楽大学卒の音楽家で、日本に帰国後『本物(のミュージシャン)が本物として評価される土台、空気というものを作っていきたい』と、さまざまな音楽事業を展開しています。
高橋さんは、どのような経緯でアンコールに入ることになったのですか?
実は僕もオーナーのボイストレーニングに通ったのがキッカケだったんです。それで、このライブハウスを立ち上げる時に、声をかけてもらいました。
もっと気軽に「音楽と触れあうきっかけ」を提供する企画
お店の特徴についてお伺いします。「900円ライブ」とありますが、これはチケット代が900円ということですか?
ライブハウスのチケットって2,000円前後ですが、それはちょっと高いと思う節もありませんか? もっと気軽に「音楽と触れあうきっかけ」を提供しようということで、通常のブッキングライブとは別に、チケット代900円のライブの日を設けています。
お客さんにとってうれしい料金設定ですが、出演者はどのような感じなのですか?
この企画は出演者の負担を軽くする目的もあって、「実験の場」、「成長の場」としてのステージにできるだけ多く立って、真の実力を身につけて頂きたく、900円のチケット5枚をノルマとしています。
出演するには特に審査のようなものはないのですか?
900円ライブの出演に関してはありません。基本的にアコースティック系のアーティストなら誰でも出演できます。大きいライブハウスにある音源審査や出演オーディションなどのプロセス、諸作業などを省くことにより、より音楽そのものに集中して貰えるように、900円ライブに関しては審査を行っていません。
通常、ライブハウスに出演するには、いくつかのハードルがありますよね。
もちろん、そのハードルを越えることが重要だということはわかっていますし、当店のレギュラーライブに出演する場合には音源の審査が必要になります。それでも、まずは「現場」です。自分がどれだけできるか…、成長するために本当に必要なものは何か…、それらをステージで見つけて貰いたく、900円ライブではあえて、そのハードルを取っ払いました。
実際に900円ライブの日はどのような雰囲気なのでしょうか?
通常のブッキングと違ってエントリー制なので、対バンが誰になるかも分からないし、事前にどのような音なのかまったく分かりませんから、「何が起こるかわからない」という面白さはあります(笑)。出演者の方にとっては、違うジャンルや音楽性の演奏を吸収して、自分にフィードバックをすることも重要だと考えています。
「バンカラ」というのは、どのようなイベントなんですか?
プロのバンド演奏をバックに一般のお客さんが歌う、というイベントです。一般の方が、生の音楽に触れる機会を増やす良いチャンスかなと思っています。サラリーマン、OLの方がたくさんいらっしゃって、日頃のストレスを発散するかのように、歌って踊っていますよ(笑)。
音楽のライバルは音楽以外のエンターテインメント
より多くの方がライブハウスを楽しめそうなイベント、企画が充実していますね。他店との差別化として企画している部分もありますか?
そのあたりについては、(他店の)ライブハウスがライバルだとは考えていません。「音楽のライバルは音楽以外の娯楽」なんです。例えば、土日にライブをやるとしても、お客さんを呼びたいんだけど、その日はディズニーランドに行くとか、映画に行くとか、さまざまな娯楽の選択肢がありますよね。業界全体で考えるなら、それらの娯楽こそがライバルなんですよね。
それは目の覚める考え方ですね。
あくまで、エンターテインメント業界の中での競争だと思っているので、音楽業界の中だけで競争している場合ではないですね。ライブハウスや音楽業界そのものが、他の娯楽に負けないエンターテインメントとして作り上げていかなくてはいけない。
確かに「木を見て森を見ず」のような状況に陥ってるような…、と感じることも少なくありません。
だからこそ、もっと幅広い層に気軽に生の音楽と触れ合うきっかけを作ろうと、900円ライブやバンカラなどの企画を打ち出しているのです。CDや音源が売れず、業界の過渡期と言われる今、「生の音楽(ライブ)」が見直されてきています。現場ががんばれば、音楽業界もまた違った、一つ上のステージに入っていけるのではないでしょうか?
若い人たちにも、もっとライブハウスに足を運んでほしいですね。
スマホやネットでしか音楽を聴いていない若者からしたら、生の演奏は新鮮な体験だと思いますよ。
それでは続きまして、高橋さんのことについて教えてください。ボイストレーニングをされていたとのことですが、それ以前には音楽活動をされていたのですか?
いいえ、僕は音楽に関わり始めたのが20代後半で、かなり遅いんですよ。学生時代もカラオケにいく程度で楽器も触ったことがなかったし、それこそステージに立ったこともなかった。ライブにも数える程度しか言った記憶がありません(笑)。
ええ!音楽にあまり興味がなかった?
いえ、そんなことはありません。音楽を聴くことと歌うこと自体は好きだったんですよ。といっても、洋楽は大学生になるまでほとんど聴いたことがなくて、売れているJ-POPのような、みんなが知っているような曲しか知りませんでしたけど(笑)。
それが、一体どうして突然この世界へ入ることに(笑)?
さきほど言った、ボイストレーナーのオーナーのところに通いはじめたのがきっかけです。最初は、ただ「歌ってみたい」という気持ちだけだったのですが、オーナーとの出会いがきっかけで本格的な音楽に触れ始めたという感じです。
いわゆる「音楽素人」から、ライブハウスの店長になるとは驚きですね。
今でも音楽的知識が他のライブハウスの店長さんより豊富なわけでもなく、技術が高いわけでもありません。でも、世間のほとんどの人が音楽的には素人なわけですよ、言葉がわるいかもしれませんが…。そういうフツーの方に音楽に興味をもってもらい、感動していただく必要がある。僕はいまだに「そっち側」に近い立ち位置で、音楽に携わってると思っているんです。
お客さん目線の「専門的ではない部分」も大切にしたい
よりお客さんに近い目線でライブハウスを運営できるということですね。
単純に「音楽が好き」という所から入ってきているので、出演者に感想を聞かれても、専門的な意見ではなく、あくまでお客さん目線の感想を伝えるようにしています。それが僕の強みだと思いますので、これからも「専門的ではない部分」は大切にしたいと思います。
専門的な視点を持たないからこそ「良いもの」は何でも楽しめそうですよね。
そうですね。僕は、アコースティックはもちろん、ロックもディスコサウンドもクラブミュージックも好きですし、どんなジャンルでも、どんな人が来ても、良ければなんでも楽しめます。それに、技術や演奏がまだまだでも、エンターテインメントとして素晴らしければ、良いライブだと受け取ります。演者としては技術を高めるのと同じくらい、お客さんへのアピール力や表現力を大切にしてもらいたいです。
それでは最後にアンコール渋谷からメッセージをお願いします
ぜひ一度、当店に足を運んでもらって、生の音楽、本物の音楽に触れて感じてください。僕たちはその環境づくりの徹底を心がけています。みなさんの「娯楽リスト」の中に「ライブハウスを楽しむ」という項目を追加していただきたいです。僕たちがそのきっかけとなれたら幸いです。
素晴らしいお話を聞かせていただきました。本日は貴重な機会をありがとうございました。
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