イベント会場の魅力探索ガイド Vol.14
KAAT神奈川芸術劇場
創造する劇場 “KANAGAWA ART” 情熱地帯
神奈川芸術劇場、通称「KAAT(カート)」は、舞台芸術を専門とする創作・発信型劇場として、横浜山下町に2011年1月11日オープンした神奈川県立の公共ホール。質の高い演劇、ミュージカル、ダンスなどの作品上演はもちろん、稽古場や工房など、公演をつくりあげるまでのプロセスを集約し、劇場自身が「作品をつくる場」として設計、運営されている。
隣接する神奈川県民ホールと一体運営されており、県民ホール本館(大・小ホール)の中ホール、小劇場の役割と機能を担い、ホール(5F〜10F)、大スタジオ(5F〜7F)、中スタジオ(3F〜4F)、3つの上演会場と2つの小スタジオ・アトリエがある。
変幻自在、ユニット式の舞台床とライトブリッジ
KAATの舞台には6尺×6尺(1.82m×1.82m)サイズのユニットが13枚×9列、全部で117枚並べられている。このユニット式の舞台床は、どこでも好きな位置を取り外して奈落まで穴が開けられるため、セリや階段、舞台上にお堀やプールを出現させるといった大掛かりな舞台装置まで、さまざまな演出が可能だ。
舞台照明スタッフが照明器具の調整で乗り込む「ライトブリッジ」も全部で57本あるバトンのうち任意の4本を使って、吊り位置を自由に設定できる。
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可変型の客席、スペクタクルな床昇降システム
真っ赤な座席が印象的なKAATホールは約1,200席。3層のバルコニー席と可変式の1階席からなり、1列目〜19列目は可動床を上下させて、勾配や形状が変えられる。基準勾配、足元が見やすい急勾配、鳥屋口(花道を設置)のほか、オーケストラピットや張り出し舞台を形成したり、平土間にしてアクティング・エリアをホールの真ん中に設けたり、舞台と客席の関係性、演出プランにあわせて劇場空間をデザイン。
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高さ27.3m、KAATの黄色い簀の子(すのこ)は「演出の基地」
KAATでは技術監督の提案のもと、舞台の天井裏にある簀の子(すのこ)上面を黄色く塗り、頭上の高さも十分に確保した設計となっている。安全で明るい作業環境を得るだけでなく、ここは決してバックヤードではない、演出をするために不可欠の場所。作品づくりに関わる多様なセクションのスタッフが訪れる創作の場だ、というKAATの理念が表れている。
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舞台美術制作、搬入〜設営が機能的につながるバックヤード
KAATには1Fホール搬入口に大道具制作室があり、リハーサル室でリハーサルをするのと同じように、ここで舞台道具を誂え、演目をつくる作業を行っている。大道具・小道具をつくる工房と衣装製作室を備えた劇場は、全国的にみても数えるほどしかない。KAATは作品をつくる大きな工具箱でもあるのだ。
4F奈落、5F舞台まで直通のホール搬入リフトは幅8.8m、奥行2.65m、高さ2.8m。積載荷重6.5トン。B1Fはスタジオローディングと有料駐車場(65台)。
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開放的なアトリウムは、可能性を秘めたオープン・シアター
NHK横浜放送局との共有スペースである「アトリウム」は高さ約30mの吹き抜け空間。ジャズライブやコンサート、アート・映像作品の展示上映も行われるオープンスペース。 大階段を上がった2Fにはチケット・インフォメーションと舞台芸術関連のブックコーナー「BOOKAAT」。本を手にとり、ちょっと一息。
ホールと大スタジオへつながる5Fロビーのガラスウォールとカーペットは、生糸貿易で栄えたヨコハマから繭をイメージしたデザイン。
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創造する劇場で、想像もつかない「なにか」と出会う
明治時代、外国商館が立ち並んでいた「山下居留地」跡に建ち、大桟橋、山下公園、中華街、元町など横浜の人気スポットに歩いてすぐのロケーションにある神奈川芸術劇場KAAT。同時代性をもった作品、実験的な舞台芸術の上演を軸に、劇場という空間のなかで、演劇、ダンス、音楽、アートが呼応しあうクリエイティブな自主事業を展開。舞台技術者の育成・スキルアップを目的とした講座やワークショップも行われている。
KAATエントランス前には、いくつもの穴(視点)が開けられた手のモニュメント。覗いてみると…。
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所在地:横浜市中区山下町281 元町・中華街駅からのアクセス・周辺駐車場・公式サイト
※このページはライブウォーカーによる企画・取材・編集コンテンツです。当サイトはKAAT神奈川芸術劇場および神奈川県、公演主催者、スポンサー等とは関係ありません。また、敷地内の写真は許可を得て撮影しております。画像・文章の無断転載等は禁止いたします。
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