イベント会場の魅力探索ガイド Vol.21
まつもと市民芸術館
水巡る城下町、松本から物語が生まれる
松本から発信する創造型の文化施設をめざして、旧松本市民会館(1958~2001)跡に2004年8月オープンした公共劇場・コンサートホール。
俳優、演出家の串田和美を芸術監督に迎え、レジデントカンパニー「TCアルプ」や「まつもと演劇工場NEXT」の活動を軸に、劇場から街へ、街から劇場へ、湧き水が巡るように文化の潤いと交流を広げている。
4層バルコニー馬蹄形の主ホール(最大1,800席)、舞台の中の実験劇場(360席)、ワンボックス型の小ホール(288席)、オープンスタジオやシアターパークなどのフリースペースを活用して、松本発のユニークな自主事業も展開。
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新しい可能性を探求する、「田の字型舞台」と実験劇場
まつもと市民芸術館では、建物中央部に主舞台とフライタワーを配置。舞台は客席の面積より広く、右(下手)の袖舞台を浅く、左(上手)の側舞台を深くとり、後舞台と後側舞台を設けた変則型の4面ステージ。
主舞台を逆向きに使って、後舞台にロールバック席を仮設すると360席の実験劇場となる。
広い舞台平面はセットの迅速な転換や、舞台に車や馬を走らせたり、池を作ったり、サーカス小屋や空中ブランコを登場させたり、自由自在に姿を変え、芸術活動の新しい可能性を切り開いている。
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流麗な旋律を奏でる、ワインレッドの馬蹄形客席
主ホールは最大視距離30m、残響時間1.1〜1.9秒、クラシカルなオペラ上演を視野に入れた馬蹄形ホール。最大キャパ1,800席からオーケストラピット使用時1,633席、昇降天井をバルコニー2段分下げて1,367席の中ホールとしても利用できる。
波打つ壁面は、明るいワインレッドから30色のグラデーションで黒みを増すことで、観客の視線を舞台にフォーカスさせ、劇中世界へと誘う。三つ星の地紋を活かした客席の張り地は、黒い舞台と調和した鳥羽色から徐々に鮮やかになり、最上階で淡いロゼピンクに変化。バルコニーをふちどる光の流線と間接照明により、非日常性と観劇の高揚感を高めている。
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呼吸する劇場、BATONに見る舞台裏のドラマ
すのこ(ブドウ棚)高さは舞台面から27m。松本城のシャチホコとほぼ同じ地上高にある。吊った幕を完全に飛ばす(客席から見えなくする)にはプロセニアム高さの倍以上の舞台上空間が必要。1本1.2トン荷重のバトン53本(静音直巻ウインチ)、照明ブリッジ3台。2019年3月、舞台機構や一部の照明器具、全ての音響設備を交換し、舞台設備をリニューアル。
さまざまなセクションで活躍するスタッフの想いがBATONに映る。チームワークを高め、何度もリハーサルを積みあげて完成度をあげていく。創造的かつ安全な演出空間を目指して、明日への活力となる舞台を作りつづけていく。
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みおつくし、水玉は弾みながら星になる
潜水艦の窓をイメージした丸窓が並ぶ楽屋の外周は、川の水と湧き水を引き込んだ水路がめぐり、楽屋を守る「お濠」としての役割も担っている。楽屋口そばには、旧市民会館(深志公園)以前よりこの地を見守るご神木、西には深志神社の境内が広がる。
世界のマエストロ小澤征爾氏が使用するゲストルーム付きの楽屋1から楽屋10は個室、大楽屋の11〜13とアトリエ、食事やミーティングができるラウンジ、メイクウィッグ室や衣装室、洗濯室、染色室、発声室などを1Fフロアに配置。
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シアターパークはみんなの広場、もうひとつの劇場
長さ45mの大階段、流線形のエスカレーターを上った2Fに広がるシアターパーク。ガラス壁の向こうは主舞台があり、実験劇場の入口はここから(右上)、さらに右奥に進みホワイエを回り込んで客席にたどりつく。内部を回遊するアプローチは、公演の期待と余韻をやわらかく包み込む。
レリーフパネルに呼応した不思議な曲線をもつベンチと、波紋が広がるようにグラデーションを施したカーペット(左) 曲面壁には、水滴のような約2万個の半透明ガラスを象嵌。昼は外から、夜は内から光がこぼれ、ガラスの水滴は月に照らされ御空に還る。
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ライラックが春を告げ、鳥の歌がこだまする
松本駅から東へ800m、あがたの森通りに面した細長いヴァイオリンのフォルムをした建物は、下諏訪出身の建築家・伊東豊雄の設計。
北アルプスと美ヶ原を一望する屋上公園「トップガーデン」には、旧市民会館前のライラック公園から移設された彫刻『パブロ・カザルスの胸像』と『春秋』(城田孝一郎作)をパブリックアートとして設置。地域の人々に愛された噴水と庭園、まちの記憶は、かたちを変えて脈々とこの地に息づいている。
市民サポーターが活躍する音楽祭「セイジ・オザワ松本フェスティバル」OMFオペラや2年に一度の風物詩「信州・まつもと大歌舞伎」「空中キャバレー」「まつもと街なか大道芸」等、まちと劇場が一体となって創り出す祭。人口24万人の地方都市から物語が生まれ、それぞれの人生の舞台へとつづいてゆく。
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所在地:松本市深志3-10-1 松本駅からのアクセス・周辺駐車場・公式サイト
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